2016 Fiscal Year Research-status Report
ワイヤレス型カプセル式超小型カメラを用いた咀嚼機能の動的実態精察
Project/Area Number |
16K15807
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Research Institution | Tsurumi University |
Principal Investigator |
大久保 力廣 鶴見大学, 歯学部, 教授 (10223760)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
阿部 實 鶴見大学, 歯学部, 臨床教授 (10089427)
山本 雄嗣 鶴見大学, 歯学部, 准教授 (20260995)
栗原 大介 鶴見大学, 歯学部, 臨床教授 (70535773)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 咀嚼機能 / 全部床義歯 / ブリッジ / 超小型カメラ / 機能的動態 / 咀嚼の実態 / 動態観察 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまで咀嚼に関しては幾多の研究が行われ,機能的,運動生理学的な分析は行われてきたが,摂食から嚥下まで食品の移送や粉砕を歯冠側から動的に観察した報告は全くないことから,小腸内の様子を外部モニターで観察するために開発されたワイヤレス型カプセル式超小型カメラを補綴装置に埋入することにより,歯冠側から頬や舌による食品移送や食品の咬断(切断),粉砕,すり潰し,混合,練和に伴う食品の形状,性状変化を直接観察することを企図した.実際に無歯顎および有歯顎被験者における口腔内組織の機能的動態や食品の形状,性状変化を動的に精察記録し,固有口腔内における咀嚼の実態を新たな視点から解明することを検討した. 今年度は,1) 固有口腔側からの観察として,咬合器に装着した上下無歯顎石膏模型上で上下顎全部床義歯を製作し,右側大臼歯部に先端可動式内視鏡(3R - MFXS55.Anyty.スリーアールソリューション)のカメラ先端部(直径5.5 mm, 視野角65°)を固定後,咀嚼時の咬断状況を動態観察した.次に被験者1名(55 歳, 男性)に対して,同じ内視鏡カメラを用いて,カメラの先端を専用の口蓋床に固定し,左側大臼歯部に設置した.その後,咀嚼時の動態観察を行なった.動態観察はカメラに接続した外部モニターで行うとともに,パーソナルコンピュタにて動画を記録した.次に2) 咬合面側からの観察として,1)で用いた下顎全部床義歯の右側大臼歯部に,ワイヤレス型超小型カメラ(MAJ - 2028,Endocapsule,Olympus)を設置した.カメラのカプセル上面を対合歯と接触するように固定し,咀嚼運動を想定した咬合器開閉時のポテトチップやグミに対する咀嚼様相を動態観察した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度行なった研究においては,咬合器に装着した上下無歯顎石膏模型上で上下顎全部床義歯に設置した先端可動式内視鏡カメラを用いた固有口腔側からの観察およびワイヤレス型超小型カメラを用いて咬合面側からの食物粉砕の過程を直接的に観察することが可能であった.しかしながら,実際のワイヤレス型超小型カメラは予想以上に大きなサイズであり,通常の全部床義歯の人工歯内およびプロビジョナルブリッジのポンティックに設置して,動態観察することが困難であった.したがって,プロビジョナルブリッジにおける先端可動式内視鏡カメラを用いた固有口腔側からの観察およびワイヤレス型超小型カメラを用いた咬合面側からの食物粉砕の過程を直接的に観察するまで至っていない. 当初の研究計画で購入を予定していたワイヤレス式超小型カメラについてカメラが人工歯内に完全に収納できず,正確な観察は困難であったことから購入を断念し,新たにファイバースコープ式内視鏡を購入し研究を開始した. また,超小型カメラの先端部の位置設定, 角度設定, 方向についての詳細な検討がなされていない.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は,さらに小さなワイヤレス型超小型カメラの開発および市場調査をする一方で,今年度購入した内視鏡を用いた咀嚼の動態観察の継続を企図する.実際には咬合器上でプロビジョナルブリッジのポンティック部に内視鏡の先端可動式内視鏡カメラを固定し,固有口腔側からの観察および全部床義歯咬合面側からの食物粉砕の過程を直接的に観察可能であるかを検討する.その後, in vitroにおける咬合器上での安全性の確認と観察結果をもとに,被験者への応用について本学歯学部倫理審査委員会に臨床応用の申請を行う.委員会の承認後,上下無歯顎者および4ユニットブリッジの装着を予定している有歯顎者を対象に,ワイヤレス型カプセル式超小型カメラを下顎全部床義歯およびプロビジョナルブリッジのポンティックに埋入装着し,下記項目に関して検討する. (1) in vitroとの咀嚼様相を比較し,実際の口腔内との相違を確認する.(2) 咀嚼回数や篩分法による咀嚼能率も同時測定し,咀嚼能率に及ぼす因子について分析する.(3) 唾液分泌量を測定し,唾液の混入による食塊形成の影響を調査する.(4) 咀嚼パターンを同時測定し,咀嚼の動的メカニズムとの関連を詳細に分析する.(5) 全部床義歯の咬合接触様式を変化させたときの食品の粉砕状況を動的に観察する.(6) 異なる食品形状や性状を摂取したときの食塊形成の過程について動的に検証する. 以上により咀嚼の運動生理学的メカニズムに関して詳細な分析を行う.
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Causes of Carryover |
今年度は,咬合器に装着した上下無歯顎石膏模型上の上下顎全部床義歯人工歯部にワイヤレス式超小型カメラを設置し,咀嚼の動態観察を試みたが,カメラが人工歯内に完全に収納できず,正確な観察は困難であった.そこで予定していたワイヤレス式超小型カメラの購入を断念し,ファイバースコープ式ではあるが,超小型カメラを有する内視鏡を購入した.しかしながら,プロビジョナルブリッジにおいて先端可動式内視鏡カメラを用いた固有口腔側からの観察および咬合面側からの食物粉砕の過程を直接的に観察できていないため,次年度に使用額が生じた.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度,実際の口腔内においてプロビジョナルブリッジおよび全部床義歯へ先端可動式内視鏡カメラを埋入し固有口腔側からの観察および咬合面側からの食物粉砕の過程を直接的に観察可能であるかを検討する.咬合器上にて安全性を確認し,本学歯学部倫理審査委員会の承認後,被験者への応用の際に使用する. また,摂食から嚥下まで食品の移送や粉砕を歯冠側から動的に観察した報告は現在まで全くないが,類似研究や異なる視点からのアプローチを逐次情報収集する必要があり,学会,シンポジウムへの参加のために使用する予定である.
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Research Products
(1 results)