2016 Fiscal Year Research-status Report
歯根膜間葉細胞から歯の再生のためのエナメル上皮細胞が作れるか?
Project/Area Number |
16K15813
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Research Institution | Iwate Medical University |
Principal Investigator |
原田 英光 岩手医科大学, 歯学部, 教授 (70271210)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西谷 直之 岩手医科大学, 薬学部, 准教授 (10286867)
藤原 尚樹 岩手医科大学, 歯学部, 准教授 (20190100)
大津 圭史 岩手医科大学, 歯学部, 講師 (60509066)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 上皮間葉転換 / 歯の再生 / エナメル上皮細胞 / 歯根膜 / ヘルトビッヒ上皮鞘 |
Outline of Annual Research Achievements |
歯の再生に用いる上皮細胞をどこから採取するかが課題であり,それを解決するために歯根膜の中の上皮間葉転換(EMT)細胞に注目した.歯根膜内に紛れたHERS由来EMT細胞を再度上皮化(間葉上皮転換;MET)することで,歯の再生に利用するエナメル上皮細胞を作成することができるかを検討することが主な目的である。 サイトケラチン(CK)14を発現する細胞が赤色蛍光Tomatoを発現するCK14cre/Rosa26RtdTomatoマウスを用いて,EMTに最も影響を及ぼすことで知られているTGF-βの発現パターンを免疫組織学的に,そしてその効果を器官培養と細胞培養で検討した。TGF-βは,歯冠側のHERSに相対する歯乳頭細胞に最も強く発現し,HERSから離脱・遊走したTomato陽性細胞の周囲では発現量が低下していた。次に,歯根発生の器官培養系を用いて,TGF-βの効果を確認したところ,HERSの短縮を認めた。さらに,TGF-βインヒビターを用いて抑制実験を行ったところ,HERSの伸張を誘導した。HERS培養細胞株HERS01aを用いた実験でも,TGF-β存在下では細胞のコロニーが壊れて細胞遊走が活発に起こった.一方,TGF-βインヒビターはその結果を抑制した.TGF-βの存在下では,ビメンチン,N-カドヘリン,Slugなどの間葉系マーカーやEMTマーカーの上昇をもたらした。以上の結果より,HERSのEMTにはTGF-βシグナルが深く関与することが明らかとなった。 次に,HERS01aにTGF-βのインヒビターを加えるとEMTを抑制すると共に,EMT細胞が再びMETを起こすことが示された。このことより,EMTを起こした細胞を可逆的に上皮細胞へと誘導することが可能であることを示された。現在,遊走に関わるRhoシグナルの制御がEMT-METを制御できるかを検討している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
CK14を発現する細胞が赤色蛍光Tomatoを発現するCK14cre/Rosa26RtdTomatoマウスを用いて,EMTを制御する上で最も影響のあるTGF-βの発現とその効果について検討した。TGF-βは,歯冠側のHERSに相対する歯乳頭細胞に最も強く発現し,HERSから遊走したTomato陽性細胞の周囲では発現量が低下していた。次に,歯根発生の器官培養系を用いて,TGF-βの効果を確認したところ,HERSの短縮を認めた.さらに,TGF-βインヒビターはその効果を阻害した。HERS培養細胞株を用いた実験でも,TGF-β存在下でEMTを誘導し,一方TGF-βインヒビターはその結果を抑制した。TGF-βの存在下では,ビメンチン,N-カドヘリン,Slugなどの間葉系やEMTマーカーの上昇を誘導した。以上の結果より,HERSのEMTにはTGF-βシグナルが深く関与していると推測した。 まずはTGF-βのインヒビターを使用することでEMTを抑制すると共に,EMT細胞が再びMETを起こす可能性があることがわかった。 現在,EMTを起こした細胞は上皮のコロニーから離れて移動し始めるので,細胞の遊走に関わるRhoシグナルについて検索を行っている。Rhoシグナルの機能亢進および機能低下の実験を遺伝子組み換えマウスや器官培養,およびHERS細胞株を用いて行っているところで,Rhoシグナルの活性化がEMTを抑制し,活性化の抑制がEMTを促進する結果を得ている。そこで,EMTを起こした細胞あるいは誘導した細胞に対してセマフォリン,Racの活性化 ,Snail あるいはZeb のsiRNAWNTあるいはYAPの阻害剤,細胞外マトリックス(フィブリリン)を用いたMET誘導実験を順次実施中であり,研究計画は予定通りに進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画書に記載通りに,Rhoシグナルの機能亢進および機能低下の実験を行い,EMTに関する変化と細胞の遊走性について検討する。さらにEMTを起こした細胞あるいは誘導した細胞に対してセマフォリン-Rhoシグナル系の活性化を用いたMET実験。Rac の活性化剤を用いたMET誘導実験,Snail あるいはZeb のsiRNAを用いたMET誘導実験,WNTあるいはYAPの阻害剤を用いたMET誘導実験,細胞外マトリックス(フィブリリン)を用いたMET誘導実験などを計画している.このようにして作成したエナメル上皮細胞を用いてマウス臼歯歯乳頭細胞との共培養による分化誘導,マウス臼歯歯乳頭細胞の培養上清を用いた分化誘導,エナメル上皮細胞株との共培養による分化誘導実験を行う。さらにこのようにして作製したMET細胞あるいはエナメル上皮に分化した細胞とマウス臼歯歯胚歯乳頭とを再融合した人工歯胚を作り,器官培養を行う。最終的には腎被膜下に移植して歯を再生するかをμCTを用いた形態観察や組織切片を作製して形態学的あるいは免疫組織学的に評価する予定である。以上の研究成果をもとに歯根膜内のEMT細胞が歯の再生に有用な細胞ソースになり得るかを総合的に検討する。
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Causes of Carryover |
概ね申請書に沿った研究計画を実施した。研究費についても計画的に使用した。但し,学会等の出張に関しては大学内の予算を使用したため,上記の金額を使用せずに,翌年度へ持ち越した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
使用予定は,主に研究遂行のための消耗品の購入と学会等への参加における出張費に当てる予定である.
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Research Products
(5 results)