2017 Fiscal Year Research-status Report
Establishment of the multidisciplinary treatment for oral cancer using a heavy particle ion radiation therapy
Project/Area Number |
16K15822
|
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
藤井 万紀子 広島大学, 医歯薬保健学研究科(歯), 教授 (70406031)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小池 学 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 放射線医学総合研究所 重粒子線治療研究部, 主幹研究員(定常) (70280740)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 口腔扁平上皮癌 / 放射線治療 |
Outline of Annual Research Achievements |
口腔扁平上皮癌は口腔がんの約90%を占めており、リンパ行性転移などで容易に頸部リンパ節、肺転移が起こりやすい。口腔がんは、その審美的、機能的観点から広範囲の切除が非常に困難であり、外科的手術の侵襲は多大で、咀嚼、嚥下などの生命活動の維持に対する影響のみならず、患者の社会的生活、社会復帰にも影響は極めて甚大である。口腔扁平上皮癌は、舌根部に近い舌縁部以外にも頬粘膜、歯肉、口腔底にも発生し、外科的手術が困難な部位や機能回復に影響を与える部位での発生も多く、古くから放射線療法も含めた治療が行われてきた。 がんは、発生臓器や組織、細胞種によってそれそれぞれ異なるがん化の経緯を辿ることが明らかになってきた。口腔扁平上皮癌ではEGFRの変異の他、P16遺伝子の不活性化、P53遺伝子の変異などが高頻度に認められる遺伝子変異として報告されている。治療法は、外科的切除が第一選択で、補助的に放射線療法、科学療法や免疫療法が行われている。そこに今回重粒子線による治療の可能性について検討する機会を得た。 通常のX線による放射線治療では、体表面で線量が高く、深いところで線量が低くなるが、一方で深部にも到達するため正常細胞や組織にも損傷を与えてしまう。陽子線、重粒子線は一定の深さで急に線量が高くなるピークがあり、それよりも進まない。エネルギー量をコントロールすることにより、腫瘍の形に合わせた照射を行うことができ、十分な範囲の切除が困難な口腔癌治療には、非常に有望であると考えている。しかしながら、通常のX線照射治療と比べて、重粒子線治療が効果が高いというエビデンスは実は確立されていない。 今回、我々は重粒子線治療の効果を調べる前段階として、X線治療に抵抗性を示す口腔扁平上皮癌細胞株について特性を調べた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
口腔扁平上皮癌細胞株で、放射線抵抗性を示すものが必要であった。放射線抵抗性を示す細胞株を樹立するため、がん幹細胞のマーカー、TGF-beta関連遺伝子など種々の候補遺伝子について調べた。その中で口腔扁平上皮癌細胞ではEMT(Epithelial-Mesenchymal Transition )に関与するマーカー遺伝子であるE-cadherinおよびN-cadherinの作用に着目するに至った。N-cadherinが、放射線抵抗性に関与することが明らかになりつつあるが、どのような機構を介して細胞の抵抗性に結びつくかを現在検討中である。
|
Strategy for Future Research Activity |
上記の結果を踏まえ、放射線抵抗性に関与すると考えられるN-cadherinを口腔扁平上皮癌に過剰発現させ、上昇または下降する遺伝子群を検討して機構解明を行う。N-cadherin過剰発現系と、コントロール群に放射線抵抗性において差があれば、N-cadherin過剰発現させた口腔扁平上皮癌に重粒子線を照射し、N-cadherin発現レベルが関与する放射線抵抗性のある口腔扁平上皮癌の効果を明らかにする。
|
Causes of Carryover |
研究代表者が体調を崩したこともあり病気治療を行っており、途中から共同研究が思うように進まなくなってしまった。現在は体調が回復したため、翌年度分として請求した助成金を使用し、計画に沿って再度実験を行う予定である。
|