2017 Fiscal Year Research-status Report
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16K15835
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
小川 卓也 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 講師 (50401360)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 歯学 / 歯根形成 / ゲノム |
Outline of Annual Research Achievements |
昨今、個別化医療の必要性が提唱され、個々のゲノム情報を利用した疾患の治療・予防・ヘルスケアが求められている。我々歯科の領域でも、矯正歯科治療や歯の再植・移植といった治療や炎症により惹起された歯根吸収が惹起されることがあり、歯根吸収のリスクに関するバイオマーカーの特定は個々の患者に合わせた予知性の高い治療が行えると考えられる。しかしながら、過度な矯正力、舌習癖などの環境的な要因だけでなく、歯根吸収を起こしやすい体質の存在や、歯根の形態や長さによっても発症のリスクや吸収の程度は異なり、その原因は明らかになっていないのが現状である。29年度は、歯根長に異常を認める希少遺伝性疾患であるoclulofaciocardiodental (OFCD) 症候群の原因遺伝子として同定されているencoding BCL-6-interacting corepressor (BCOR) の機能解析を行うことで、歯根形成メカニズムを解明することを目的とした。具体的には、BCORの核移行に着目し、核-細胞質間輸送因子であるkaryopherin alpha (KPNA) familyとの相互作用について検討することとした。結果として、核移行シグナル(NLS)を有さない変異タンパク(Mut1)は主に細胞質で発現し、NLSを含む変異タンパク(Mut2)は細胞質および核の両方で発現していた。ヒト歯根膜細胞で同定されたKPNA2、KPNA4、KPNA6をMut2と共発現させ、Mut2の局在を検討したところ、KPNA2およびKPNA4に関しては、細胞質および核の両方で発現していた局在を核内への発現に変化させ、KPNA6に関しては、その局在に変化を認めなかった。以上の結果より、KPNA2とKPNA4がBCORの核輸送に重要な役割を果たすことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度同様引き続き、我々が作成したデータベースに基づき、著明な短根を示す患者の抽出を行っている。また、歯根長に異常を認める希少遺伝性疾患であるOFCD症候群の原因遺伝子であるBCORの機能を解明することで、歯根形成のメカニズムを明らかにする試みも同時に行い、核-細胞質間輸送因子であるKPNA familyの中で、KPNA2、KPNA4がBCORの核輸送に重要な役割を果たすことを示唆することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
著明な短根を示す患者において、矯正歯科治療に伴う歯根長の変化を来年度も追跡していくとともに、引き続き短根を示す患者をリクルートし、ゲノム情報の蓄積を図り、ゲノム解析を試みる。また、同時に希少遺伝性疾患である歯根長の異常を伴うOFCD症候群患者の情報を用い、歯根形成メカニズムの解明を図る。患者情報を活用した個別化医療を目指した歯根形態異常の予防因子の解明を目指した研究を推進する。
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Causes of Carryover |
BCORの機能解析を中心に遂行し、ゲノム解析に関しては一部の試料のみの解析であったため。次世代シークエンサーによるゲノム解析に使用するとともに、分子生物学的手法を用いて、BCORとKPNA2、KPNA4の相互作用を制御することで、歯根形成メカニズム解明に企てる。具体的には、既に作製済みのBCOR変異を有する発現ベクターを用い、核-細胞質間輸送因子KPNAsならびにImpotinβの発現ベクターとCOS7細胞ならびにHuman PDL (hPDL) fibroblasts (LONZA)に共発現させ、免疫沈降により相互結合の有無を検討するとともに、結合ドメインを同定する。さらに、RNA干渉による核移行の制御を試みる。
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