2016 Fiscal Year Research-status Report
乳歯で染色体異常疾患を克服するトランスレーショナル研究
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16K15839
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
野中 和明 九州大学, 歯学研究院, 教授 (90128067)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 浩 九州大学, 歯学研究院, 助教 (00421313)
加藤 大樹 九州大学, 歯学研究院, 助教 (30452709)
広藤 雄太 九州大学, 大学病院, 医員 (80759746) [Withdrawn]
山座 治義 九州大学, 歯学研究院, 准教授 (30336151)
増田 啓次 九州大学, 大学病院, 准教授 (60392122)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ダウン症 |
Outline of Annual Research Achievements |
永久歯と交換時に脱落する乳歯の歯髄には、多分化能を持つ間葉系幹細胞(ヒト乳歯歯髄幹細胞:SHED)が存在している。この細胞は間葉系細胞のみならず、外胚葉系や内胚葉系の細胞への分化能も示す再生医療の有用な細胞源である。従来捨てられるはずの乳歯から採取したこの幹細胞は、非侵襲的な方法により細胞調製が可能であり、再生医療のための細胞源としての有用性が高い。本研究では21番染色体の過剰により発症する染色体異常疾患であるダウン症候群について、患児より採取・調製したSHEDを用いて、ダウン症における神経精神疾患の病態解明と治療法の開拓を目的としている。この目的の遂行のため、平成28年度はゲノム編集と染色体の構造改変技術を用いて、ヒト細胞(HeLa細胞)における過剰な21番染色体の特異的な除去方法の開発に成功し、その成果を論文に発表した。これにより、21番染色体を3本持つダウン症患者より調製したSHED細胞から過剰な21番染色体を除去し、21番染色体を2本持つ健常者と同じ細胞を作製する準備はできた。また、ダウン症患者から単離したSHEDは、21番染色体を3本保持したまま増殖していることを、染色体の染色とFISH法により確かめ、このSHEDがダウン症の細胞モデルとなりうることが明らかにした。さらに、このダウン症SHEDを、神経細胞へ分化誘導し神経細胞学的な解析を行った。その結果、ダウン症SHEDは、健常児より分離したSHEDと比較して、神経細胞への分化に異常が認められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度研究計画で予定していた、ダウン症患者からのダウン症SHEDの培養系は確立できた。さらに、ヒト細胞からの21番染色体の除去方法も確立できた。この方法は原理的に多くのヒト細胞に応用が可能であるため、SHEDにおいてもダウン症細胞から正常な細胞が作製可能である。また、正常SHEDとダウン症SHEDの神経分化細胞における比較により、ダウン症の病態解明についての知見も得られていることから、本研究の進歩状況はおおむね順調であると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
H28年度で確立した技術を用いて、ダウン症SHEDから過剰21番染色体を除去した正常型SHEDを作製する。この正常型SHEDの回復状態の解析を行うため、細胞増殖能、遺伝子発現、タンパク質発現解析を行う。また、正常型SHEDを神経細胞へ分化させ、ダウンSHEDで見られた神経細胞への分化に異常が回復するか解析する。さらに、分化させた正常型SHEDと、ダウンSHEDの遺伝子発現とタンパク質発現の差を解析し、ダウン症の病態機序の解明を行う。
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Causes of Carryover |
ダウン症SHEDから過剰21番染色体を除去した正常型SHEDの作成が途中のため、H29年度へ予算を繰り越すことになった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
H28年度と同様に研究経費は主に消耗品に使用し、その他は旅費、および論文出版費として使用する。
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Research Products
(1 results)