2016 Fiscal Year Research-status Report
歯周組織を用いたマルファン症候群の新規分子イメージング診断技術の開発
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16K15844
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
齋藤 正寛 東北大学, 歯学研究科, 教授 (40215562)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉田 恭子 (今中恭子) 三重大学, 医学系研究科, 准教授 (00242967)
石河 真幸 東北大学, 大学病院, 助教 (60432936)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | マルファン症候群 / 結合組織疾患 / 細胞外マトリックス / イメージング診断 / 解離性大動脈瘤 / 歯周炎 / モノクローナル抗体 / 弾性システム |
Outline of Annual Research Achievements |
微細線維は、fibrillin-1 (FBN-1)を主成分に形成される線維状細胞外マトリックスで、様々な分子間ネットワークを形成することで、歯、皮膚、骨格および血管などの結合組織における弾性機能と機械的強度の維持に関わる。 FBN-1の遺伝子変異を原因とする Marfan症候群(MFS)は、FBN-1の遺伝子変異を原因に微細線維崩壊症を引き起こし、体全体の結合組織が脆弱化し、歯周炎や解離性大動脈瘤を含む様々な結合組織疾患を引き起こす。このことから、微細線維は結合組織で強度維持に働いている普遍的な機能分子であり、その崩壊機構は全身の結合組織疾患と歯周炎などの歯科領域での疾患を繋げる共通の標的と考えられる。本研究の目的であるヒト歯肉の微細線維構造を観察可能なヒトモノクローナル抗体の作成を行い、免疫染色で歯肉の微細線維構造から解離性大動脈瘤を予想可能な検査システムの構築することである。ヒトfibrilin-1のN末端領域の組換えタンパク質を293free style cellを用いて産生し、Niカラムを用いて精製を行った。精製したタンパク質を抗原としてモノクローナル抗体を作製した。得られたクローンのより、western blottingおよび免疫沈降に使用できるのを選別し、実験に使用した。倫理委員会の承認の元、インフォムドコンセントを得られたマルファン症候群の患者の解離性大動脈瘤の手術時に得られたサンプルを用いて免疫染色を行った。その結果、大動脈中膜においてfibrillin-1抗体陽性の線維は観察されたが、断片化していることが判明した。また大動脈中膜にfibrillin-1は断片化していたが、外膜においてはfibrillin-1抗体陽性の微細線維の形成が観察された。この結果より免疫染色に使用可能なヒトfibrilin-1モノクローナル抗体を得る事が出来た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究計画に必須であるヒトfibrillin-1モノクローナル抗体の作製に成功し、また同抗体を用いた ヒト組織の免疫染色も行う事が出来たため、順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
歯肉組織の微細線維を3次元イメージングで解析するために、本研究では透明化技術に着目した。 透明化技術とは生体組織を脱色する技術で平成26年に理研で開発された技術(CUBIC)である。この報告では脳組織の透明化を行い組織丸ごとの免疫染色に成功している。そこで本研究では、バイオプシーで得られた歯肉組織の透明化に適したバイオプシーおよび試薬の条件検討を行う。また今年度作製した抗FBN-1抗体を用いた免疫染色に適した条件も同時に行い、歯肉組織丸ごと抗ヒトFBN-1抗体で免疫染色できる条件検討を行う。歯肉組織の透明化処理技術で作製したサンプルに関して、800umの厚切りの切片を用意して、供焦点レーザー顕微鏡(東北大学所有)を用いて3次元的に蛍光画像を撮影し、3次元画像解析ソフトを用いて解析する。右側には研究代表者が歯胚をモデルに供焦点レーザー顕微鏡で撮影した微細線維の画像を示す。供焦点レーザー顕微鏡による3次元画像はXY軸、XZ軸からの解析を可能にするため、微細線維の太さ、走行を立体的に解析する事が可能である。マルファン症候群のサンプルを用いて断裂像、太さおよび走行の変化の特徴について、数理生物学的手法を用いて定量化し、歯肉組織の微細線維崩壊状態と解離大動脈瘤との相関性を検証する。また微細線維イメージングの迅速化を図るため、シート状のレーザー照明を用いるライトシート顕微鏡を用いた3次元イメージングの高速撮影の導入も行う。本研究では、期間内に蛍光イメージング解析を用いて、歯肉を検体にマルファン症候群における解離性大動脈瘤を診断する基盤技術を開発する。
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Research Products
(6 results)