2017 Fiscal Year Research-status Report
高齢者の高次脳機能と酸化ストレスに対する効果的な摂食嚥下機能療法の探索
Project/Area Number |
16K15859
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Research Institution | Kanagawa Dental College |
Principal Investigator |
松澤 直子 神奈川歯科大学, 歯学部, 臨床講師 (70277911)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小松 知子 神奈川歯科大学, 大学院歯学研究科, 講師 (20234875)
李 昌一 神奈川歯科大学, 歯学部, 教授 (60220795)
小野塚 実 神奈川歯科大学, 歯学部, 名誉教授 (90084780)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 酸化ストレス / 嚥下体操 / 唾液 / 活性酸素消去能 / 認知症 / 脳血管障害 / 認知機能検査 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、脳血管障害患者や軽度認知障害、認知症患者において、嚥下体操を実施した前後に2種類の認知機能検査(Mini-Mental-State Examination; MMSE、かな拾いテスト)および磁気共鳴機能画像法と光トポトラフィを用い計測し、評価することで、前頭前野の 賦活と再生および認知機能への影響を解明することを1つの課題としている。同時に、被験者の唾液中の活性酸素消去能を電子スピン 共鳴(ESR)法にて測定し、嚥下体操による変化を捉えることで、酸化ストレスを介した神経認知機能の状態を評価することも目的である。 これらの目的を達成するために、昨年度に引き続き今年度も、十分なインフォームドコンセントを行い、書面による同意が得られた健常高齢者、脳血管障害後遺症患者、認知症患者を対象としてデータを収集した。本年度は昨年度の結果を受けて、一連の嚥下体操のなかで、どの運動が抗酸化能を高めるかの検証を開始した。まず、健常者で舌、頬、口唇の各体操および発声の前後に安静時唾液を採取した。得られた唾液を処理し、主要な活性酸素であるスーパー オキシド(O2・-)とヒドロキシラジカル(HO・)に対する消去能をESR法にて測定した。O2・-またはHO・の産生系に被験者の唾液を加えた後、それら活性酸素をESR 法で捕捉するためのスピントラップ剤を用いin vitro X-band ESR法で検出を行い、唾液の活性酸素消去能を解析した。健常者ではO2・-またはHO・の抗酸化活性は嚥下体操により上昇するが、脳血管障害後遺症患者、認知症患者ではそのような結果がみられなかった。現在、被験者数を増やし、データを蓄積している。さらに運動の効果をMMSEとかな拾いテストにより検討する予定であったが、他の認知機能や高次脳機能評価を取り入れ、fMRIの検討を含めた脳機能の評価のブラッシュアップを同時に進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
健常者では唾液中のO2・-またはHO・の抗酸化活性が嚥下体操により上昇し、脳血管障害後遺症患者、認知症患者ではみられない結果を得た。そのため、加齢、脳血管障害、認知症などは唾液中の抗酸化機能の変化に影響を与えることから、本研究結果の詳細な検証が必要である。この結果をうけ、認知機能テスト、高次脳機能評価の検証を進めるために、研究分担者関連病院との共同研究を進めていくはずであったが、研究分担者の研究環境の変化により、当該病院での共同研究が難しくなった。そのため、新たな高次脳機能評価を専門とする連携研究者とfMRI、光トポグラフィ等の高次脳機能評価法の議論を重ねた。その結果、結果の判定がしにくいfMRI、光トポグラフィ等の高次脳機能評価法の前に、既に連携研究者が推奨している高次脳機能評価法で評価した後に必要であれば、fMRI、光トポグラフィによる評価を行うことにした。そのため、当初の研究計画が変更になり、計画に遅れを生じている。 有効なデータでの解析を行うためには、被験者数を増やす必要がある。また、脳血管障害患者、認知症患者を対象者にした検討も必要であり、早急に被験者数を増やし、検討を行う予定である。当初の計画における評価も継続的に行っているが、十分な人数の確保ができない状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度から当初の計画で開始した被験者に対しては、継続的にデータの採取を行う。本研究目的を達成するために、今年度は昨年度、十分な人数の確保に至らなかった高齢者ボランティア(60~75歳)を増やすとともに、MCI、アルツハイマー病、 脳血管性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭葉変性症、脳梗塞後遺症患者(杖または自立歩行可能)のボランティアもさらに増やし、信頼の高いデータを得る必要がある。蓄積されたデータから、認知機能と酸化ストレスに及ぼす嚥下体操の効果が健常者、MCI、アルツハイマー病、脳血管性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭葉変 性症、脳血管障害後遺症患者で違いがみられるかどうか検証していく。さらに、最終年度である本年度は一連の嚥下体操さらに器官別の体操時において、連携研究者が推奨する方法(実行機能、集中力、作業の処理能力など)による認知機能評価によるスクリーニングを行う。その結果を考察し、その上でfMRI、光トポグラフィを用いて検討を行う。 最終的に嚥下体操の効果を実行機能、集中力、作業の処理能力などの認知機能と嚥下体操による賦活される脳部位を同定し、前頭前野におけるヘモグロビン濃度への影響、さらに唾液活性酸素消去能に対する効果から、酸化ストレスとの相関などについて評価する。
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Causes of Carryover |
(理由)嚥下体操は様々な動きが含まれることから、その中のどの器官における運動が最も効果的な体操であるかの検討を開始した。本検討事項に関する被験者数は十分に確保できず、本年度は試薬、物品等の消耗品の使用が少なかった。今後、被験者数を増やし、データの信頼性を高める必要がある。また、最終年度において行う脳機能評価は当初の計画以上にランニングコストがかかることが予測されたことから、その費用を確保するため本年度の支出を抑えた。 (使用計画)被験者をさらに増やして検討するため、採取した唾液サンプルの活性酸素消去能の測定に必要とされるESR関連の付属品、試薬などの消耗品の購入を予定している。サンプル数の増加に伴い、サンプル処理、測定を迅速に行うため、技術者の雇用を検討中である。fMRI、光トポトラフィを実施するため、施設までの被験者の交通費やランニングコストが必要であり、研究分担者を含めた共同研究者とのミーティング、情報収集を含めた研究成果の学会発表のための参加費,交通費、論文の投稿費、別刷代も必要となる。
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[Presentation] 中年期Down症候群者3症例における口腔機能の経時的変化2017
Author(s)
小松知子, 西山和彦, 松澤直子, 新倉悠里, 高満幸宜, 岡部愛子, 能地玲子, 村井朋代, 李 昌一, 宮城 敦, 森本佳成
Organizer
第34回日本障害者歯科学会
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