2016 Fiscal Year Research-status Report
ミドルマネジャーによる看護組織変革に向けたコミュニティシップ測定への挑戦
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16K15866
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
緒方 泰子 東京医科歯科大学, 大学院保健衛生学研究科, 教授 (60361416)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 看護管理学 / コミュニティ / コミュニティシップ / 尺度開発 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、ミドルマネジャーによる組織変革の鍵を握る、コミュニティ及びコミュニティシップの構成要素を看護組織という枠組みの中で明らかにし、コミュニティ及びコミュニティシップを測定する尺度を開発することである。平成28年度は、以下のように情報収集と整理を主軸に研究に取り組み、成果を得た。 ①先行研究や書籍を通じた情報収集と整理:コミュニティおよびコミュニティシップについて情報を収集し整理した。②コミュニティシップ醸成に関連する手法とその効果に関する情報収集と整理:国際会議に参加し、コミュニティシップを組織変革の主要概念の一つとして教授している国際大学院*において用いられている「内省と対話」に関する手法とその効果について、欧米の事例報告等を通じて情報を得た。③「内省と対話」の手法による看護師集団への介入効果に関する情報収集と整理:看護管理者集団に対し「内省と対話」の手法である「フレンドリーコンサルティング」を用いた介入を行い、看護管理者への影響について参与観察および当事者のコメントより情報を得た。「内省と対話」の手法は、自身を知る・他者を知る・両者の違いを知る機会となり、この手法の到達点である組織構成員同志が互いに尊敬し合うようになっていくことによって、コミュニティやコミュニティシップの醸成につながり得ることが期待された。④コミュニティシップを教授する大学院関係者(教育・研究者)からの情報収集と整理:コミュニティシップ測定尺度の開発等についてIMHLやIMPMの担当教員から情報・助言を得た。
* International Masters of Health Leadership (IMHL)、International Master Program in Practicing Management (IMPM)
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成28年度は、当初計画していた、コミュニティ及びコミュニティシップの特性を表す質問項目案を用いたパイロットテストは実施していない。また、質問項目案作成を意図した、看護管理者および看護スタッフへのインタビュー調査、看護実践現場の参与観察についても、時間的制約および以下の理由から、実施の有無および実施方法を再検討中である。その理由とは、職場におけるコミュニティシップという概念が新しいものであり、存在は確認されているが既存の測定法が存在しないものであるため、概念整理と質問項目案の作成に至る研究過程・研究方法を慎重に選択する必要性があることである。カナダの経営学研究者でありコミュニティシップの提唱者等からは、“コミュニティシップ測定尺度の開発は可能だが注意を要する”といった指摘がなされ、研究方法について再検討する必要性が生じた。以上により、やや遅れていると評価した。 しかしながら、研究目標達成に向けて、国際会議に参加し、コミュニティシップ醸成に必要となる「内省と対話」の手法による組織構成員への影響・効果について、看護職の事例を含む海外の事例を通じて情報を得ることができた。国際会議では、IMHLやIMPMの教員より「内省と対話」の手法である「フレンドリーコンサルティング」実施時の助言等も得ることができた。更に、この手法を看護管理者に応用し、看護管理者への影響・効果について参与観察および当事者のコメントより情報を得ることができた。これらは、本研究の目的達成において意義があると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、コミュニティシップの提唱者等による指摘をもとに、分析方法を含めた研究方法を全体的に見直しながら研究を遂行する。コミュニティ及びコミュニティシップ測定尺度の作成に向けて、改めてコミュニティ及びコミュニティシップの概念を確認・整理した上で、測定に必要な項目案(測定項目案)の作成をめざすものとする。測定項目案作成までの分析の道筋等について慎重に検討しながら、必要に応じて看護管理者および看護スタッフへのインタビュー調査や看護実践現場での参与観察などを行い、先行研究および書籍等にもとづく情報を統合して、コミュニティ及びコミュニティシップの測定項目案を作成する。インタビュー調査や参与観察については、研究を遂行しながら、実施の有無や方法について随時検討する。時間および予算制約に依存はするが、可能な限り、測定項目案を用いた質問紙調査の実施をめざす。調査は、所属組織における倫理審査委員会での承認を得た後に開始する。
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Causes of Carryover |
平成28年度は、コミュニティ及びコミュニティシップを測定する項目案をもとに自記式質問紙を作成し、パイロットテストを実施する予定であったが、予算的・時間的制約およびコミュニティシップという概念が新しいものであるため、尺度の構成要素の設定を慎重に行う必要があり、質問紙調査の実施を見送った。その代わり、コミュニティシップ醸成に関連する手法とその効果に関する情報収集・整理を行うため国際会議に参加し、当該手法を用いた看護師集団への介入を行ったが、当該国際会議は日本で開催され、介入も日本において行ったため、海外渡航費や滞在費等は不要であった。以上により、次年度使用額が生じている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度は、コミュニティ及びコミュニティシップ測定尺度の作成をめざして、必要な研究方法を検討・選択しながら実施する。研究方法候補には、看護管理者・看護スタッフへのインタビュー調査や看護実践現場の参与観察、コミュニティ及びコミュニティシップの測定に必要な項目案(測定項目案)による郵送調査を含み、必要に応じて国内外からの関連情報も収集する。そのため、各方法の関連費用(交通費、逐語録の作成費、質問紙の印刷費・送料・データ入力費など)が必要となる。新しい概念を測定する尺度であるため、慎重に研究方法を吟味しながら進める必要があるが、今年度は、測定項目案を用いた質問紙調査の実施をめざすこと、尺度開発に関する研究成果の公表(論文投稿、学会発表等)を行うこと等から、平成29年度の配分額以上の費用が必要であると予測される。
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