2017 Fiscal Year Research-status Report
総力戦体制下の育児雑誌に見る「母子保健」思想:『愛育』誌と『愛育新聞』誌を中心に
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16K15893
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Research Institution | Chubu Gakuin University |
Principal Investigator |
真鍋 智江 中部学院大学, 看護リハビリテーション学部, 講師 (20369531)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
浅野 俊和 中部学院大学, 教育学部, 教授 (00300351)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 看護の歴史 / 社会福祉史 / 母子保健 / 科学的育児法 / 総力戦体制 / 恩賜財団愛育会 / 愛育研究所保健部 / 斎藤文雄 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、総力戦体制下に「恩賜財団愛育会」〔1934(昭和9)年3月設立〕が、母子保健事業組織として発行した『愛育』誌及び『愛育新聞』誌の掲載記事を取りあげ、それらに見られる「母子保健」思想が内包する歴史的特質の抽出・分析を試みるものである。 平成28年度(1年目)は、『愛育』及び『愛育新聞』に掲載された記事、愛育会発行の単行本の収集を進めた。また、研究代表者が『愛育新聞』の誌面調査を行い、“『愛育新聞』総目次”を作成して、国立国会図書館及び同誌を所蔵する公立図書館・大学図書館などに寄贈する形で研究成果の公表も行っている。さらに、収集した単行本などの一部を使用して、研究分担者が愛育隣保館館長の廣瀬興に関する学会発表(口頭発表)も行った。 平成29年度(2年目)は、そうした前年度の成果に加える形で、同会の「母子保健」事業を支えた愛育研究所保健部の状況にあえて焦点を当て、同部部長・附属施設愛育医院院長の斎藤文雄が執筆した著書・論文を収集する一方、関連文献を集めることにより、総力戦体制下の保健事業をめぐる政策や小児科医師の動向などの把握にも努めた。斎藤に注目したのは、彼が部長・院長として保健部による諸活動を指導し、全体を統括する立場にあったとの仮説によるものである。収集した斎藤文雄執筆の文献については、研究代表者が、その論調の変化などを追うため時系列に従って整理し、“著作目録”としてまとめた上、国立国会図書館・公立図書館・大学図書館などに寄贈する形で研究成果の公表をしている。また、研究分担者は、愛育会が総力戦体制下に発行した育児書2冊を取りあげ、両者に見られる思想的変化を研究ノートとしてまとめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成29年度(2年目)は、愛育会の一次史料を所蔵する日本子ども家庭総合研究所図書室の閉鎖が継続された影響から、研究計画の一部に修正を加える形で進めた。具体的には、そうした予期しない出来事への対応策として、上記のように、愛育会の「母子保健」事業を支えた愛育研究所保健部の状況へとあえて焦点を当て、同部部長・附属施設愛育医院院長の斎藤文雄を中心人物に据えて、彼の著作をたどる形で、同会の論調をまとめる方向性を探った。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度(2年目)における研究の遅れが若干見られることから、その作業を継続して取り組むとともに、収集・整理をした各種史料などに基づいて、愛育会による「母子保健」関連の取り組みが内包していた意義と限界を分析・検討する。また、それまでの作業を踏まえ、研究成果について最終的な報告も行う。具体的には、次のような作業を進める計画である。1)まず研究の遅れについて、それを回復できるような体制づくりを行う。2)本研究と関わる先行研究や新たに発表された研究(著書・論文・学会発表など)を調査・収集し、それらを批判的に検証する。3)これまでの作業と研究成果を踏まえながら、総力戦体制下、愛育会が進めた「母子保健」関連の取り組みについて、その意義と限界を検討する。4)関連学会における口頭発表、学会誌・本学紀要に論文なども投稿する。
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Remarks |
浅野俊和「恩賜財団愛育会の育児思想―総力戦体制下に編輯された2冊の育児書を手がかりとして」『日本ペスタロッチー・フレーベル学会課題研究報告書―子育て支援に関する研究』日本ペスタロッチー・フレーベル学会発行、2018年2月28日、pp.51-60(総頁180)
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