2017 Fiscal Year Research-status Report
生活障害のケアの体系化と認知症高齢者の病みの軌跡の解明
Project/Area Number |
16K15953
|
Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
諏訪 さゆり 千葉大学, 大学院看護学研究科, 教授 (30262182)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
辻村 真由子 千葉大学, 看護学研究科, 助教 (30514252)
池崎 澄江 千葉大学, 大学院看護学研究科, 准教授 (60445202)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 認知症 / 生活障害 / ケア / 病みの軌跡 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、認知症高齢者の生活援助に関わる介護施設スタッフが、対象者に生じている食事に関する生活障害に対し、行うべき食事援助の内容を適切に選択することが可能となる簡便な記録表を作成することである。生活障害については、朝田の定義に則り「認知症の人に見られ、それゆえ個人的・家庭的活動と社会的参加を困難にする日常生活上の障害である。原因は主に特定の大脳病巣であることが示唆される。巣症状(執行・失認など)と呼ばれる固有の局所病変に呼応する症候はその原因となり得る。概して認知症では、進行とともに脳病変は広範化し、複数の器官に合併病変も生じる。このように複合的な病態であっても、主たる原因が特定の大脳病巣であることが示唆され、冒頭の日常生活上の障害にあてはまれば、生活障害に含まれる」とした。 対象は、介護施設に入居している65歳以上の高齢者で主治医にアルツハイマー型認知症と診断されており、かつ心身状態と日常生活は安定しているが、認知機能障害による摂食開始困難や摂食中断が見られ、食事に関し見守りや介助を要する3名であった。これらの認知症高齢者の食事場面について、「食事に関する生活障害」「実際に食事動作に困難を来たしている様子」「困難であった食事動作に対し行われた援助」「援助に対し認知症高齢者が取った行動」を観察した。観察内容と食事の生活障害に関する過去の文献を踏まえて、記録表を作成した。その後、老人看護専門看護師、訪問看護認定看護師、介護職員に記録表を提示して意見を求め、その後、洗練させた。その結果、「食事に関する生活障害の具体」「考えられる要因」「主体性を引き出すケア」「配膳・声かけの工夫」「空間・食材の調整」から構成される記録表が開発された。 さらに、認知症高齢者が記した日記に記載された、認知症高齢者の日常生活における困難感や生活障害の状況を分析し、文化的側面から考察した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
中等度および重度の認知症高齢者の食事に焦点を当て、食事に関する生活障害とケア具体の詳細を食事の経過にそって構成した記録表を開発することができた。一方、入浴と排泄についても、観察して経過を追うことができている。 また、約4年間に渡り認知症高齢者が記した自筆の日記に記載された、認知症高齢者の日常生活における困難感や生活障害の状況を分析し、文化的側面から考察した。これはあくまで日記の著者本人の主観であるということが限界であるが、4年間の生活障害と困難の経過が明らかにすることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、認知症高齢者の食事に関する生活障害を中心に、具体的な生活障害とケアの経過を追跡するとともに、病みの軌跡を明らかにする。研究協力施設(1施設)と協働することで、生活障害の具体とケアが電子的な介護記録システムに組み込まれ、他の要因との関連性を把握できるようにシステムを組むことを推進していく。 また、入浴と排泄についても、具体的な生活障害とケアをヒヤリング調査によって明らかにし、食事の生活障害とケアの記録表と同様のものを開発する。その後、介護施設等で入居する認知症高齢者を対象として実際に使用してもらい、具体的な生活障害とケアの経過を追跡することで、病みの軌跡を明らかにしていく。さらに入浴と排泄についても電子介護記録システムの中に組み込まれ、食事、入浴、排泄に関する認知症高齢者の生活障害が日々、継続的に記録されるようになることを目標とし、生活障害とケアの体系化、および認知症高齢者の病みの軌跡の解明を目指す。 研究成果の公表は、現時点でInternational Journal of Nursing Practiceにアクセプトされた論文が1編ある。学会発表としても演題登録をしている。今後も、英文ジャーナルを中心にして、積極的に成果を公表していく。
|
Causes of Carryover |
新たに所属研究機関から近距離の研究協力施設を得ることができたので、旅費の支出が抑えられたため、次年度使用額が生じた。しかし、遠距離の研究協力施設にも継続的にデータ収集を依頼しているため、次年度は旅費として支出する計画である。
|