2017 Fiscal Year Research-status Report
精神科入院患者の地域移行を促進する病棟地域連動型リカバリー支援ツールの開発
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16K15959
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Research Institution | Yamagata Prefectural University of Health Science |
Principal Investigator |
安保 寛明 山形県立保健医療大学, 保健医療学部, 准教授 (00347189)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 地域移行 / コンコーダンス / リカバリー / WRAP / 地域定着 / 退院促進 / 統合失調症 / 精神障害 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究では、大きく2方向の調査を行った。 調査1.IMRと心理教育の違いを明らかにすべく、WRAPなどのリカバリー志向のプログラムの経験を一定以上有する精神障害を有する者(当事者)に対してIMRに用いられる映像や資料を読んでもらい、精神症状に関する表現やリカバリー志向とのバランスについての評価を聞いて比較した。当事者によると「幻聴」「妄想」よりも「存在しないものが聞こえる」「頑なで誤った確信」といった表現によって自分の立場から見た表現となっていて受け入れやすい、ストレス対処の全体像の中で治療等を扱うので自分に自信を持ちやすい、といった意見が得られた。 調査2.退院促進や地域定着に有益な援助様式を明確化することを目的として、精神科医療機関のIMRおよびWRAPに該当する活動を行っていない医療機関に赴き、前年度に行ったIMRやWRAPに該当する活動を行う医療機関との援助場面や環境の違いを比較した。 フィールドワークした活動において、IMRやWRAPを行わない医療機関には以下の特徴が見出された。1)リスク管理の方法として行動範囲や所有物の制限が選択肢にあり、一部は実際に制限のニュアンスを持つ表現で実際に言語化されている 2)敬称や職位などを単体で呼ぶ傾向があり、例えば主治医については「○○(名字)先生」ではなく「先生」、受け持ち看護師については「〇〇(名字)さん」ではなく「担当」と呼んでいる、3)質問や疑問に関する対話の場面ではお互いの考えの相違点に注目したり、考えに注目せずにその場にいない人物に解決の鍵を求めたりする場面が多くみられた。 なお、国際学会に参加及び発表を行い、関連する研究を知るとともに意見交換を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画していた内容をおおむね達成することができた。 調査1を通じて、IMRを運用する場合に鍵となる構成要素が明らかになった。そのため、プログラムの構築は十分に可能な水準になってきている。リカバリー志向の支援については精神症状や困難の表現方法やその程度に熟練あるいは専門性を必要とするが、妄想や幻聴、抑うつ気分といった他者との比較による精神症状の記述(例えば妄想は、”他者から了解不能である”と開設されやすい)ではなく、自分自身で理解できる記述(例えば妄想は”頑なな信念”)とすることで疾病による劣等感や疎外感を感じるリスクを減らすことができるだろう。 また、調査2によってIMRおよびWRAPに該当する活動を行っていない医療機関と比較したことで、医療機関がもつべき直接ケア以外に存在する環境や文化的要因を明らかにすることができてきている。このことで、医療機関においてリカバリー志向の援助を構築する際の要点を援助そのものだけでなく全体のマネジメントから整理することができ、医療機関にとって導入しやすい知見になることだろう。 また、当初に予定していた専門学会に参加するだけでなく国際学会において発表を行ったことで、国際的な視点からの知見を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
具体的な援助の方略として、面接モジュールの開発を進める。また、これまでの知見を学会における発表にとどまらずに論文などの形式で記述し、発表する。 面接モジュールについては、IMRおよびWRAPの要素を持つプログラムをすでに有する医療機関と協働して、実行可能性に関する検証を行う。
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Causes of Carryover |
インタビュー調査の逐語録作成を研究者自身がおこなったために、予算計画よりも謝金が少なく経過している。最終年度に国際学会での発表や投稿論文の英文校閲費用が掛かる見込みである。
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