2018 Fiscal Year Research-status Report
認知症高齢者の自己決定支援に対するケアスタッフの意識・ケアの変化
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16K15963
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Research Institution | Prefectural University of Hiroshima |
Principal Investigator |
渡辺 陽子 (半田陽子) 県立広島大学, 保健福祉学部(三原キャンパス), 講師 (20364119)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 認知症高齢者 / 自己決定支援 / アクションリサーチ / スタッフ |
Outline of Annual Research Achievements |
2017年度までの研究で,認知症高齢者に対する看護・介護スタッフによる日常生活における継続的な自己決定支援介入が,認知症高齢者の前頭葉機能,精神機能,生活の質を有意に向上させることを明らかにした。また支援する側のスタッフにも,認知症高齢者に対する苛立ちなどのネガティブな感情表現の低下傾向がみられるということも明らかにした。この結果から自己決定支援は,認知症高齢者だけでなく,スタッフにも良い影響を及ぼす支援である可能性が示された。しかし一方で,スタッフの支援実施に対する自記式質問紙の記述からは,多忙な日常業務の中での自己決定支援の難しさ,明確な意思を示されない方もおられる中での支援継続の困難さが示された。ゆえに,より継続的な支援の実施には,研究者と実践現場のスタッフが協働し,認知症高齢者の自己決定支援を進めていく上での課題を抽出し,解決方法を考えながらともに行動する必要があると考えられた。 2018年度は,A病院の研究協力の同意を得て,認知症治療病棟の看護スタッフとの共同研究を開始した。共同研究者である看護師長・看護主任との話し合い,および研究者の3日間の病棟研修を経て,スタッフが現在抱えている課題(日常生活援助に対する拒否,ケア実施に対する負担感など)の解決なしには,「自己決定支援」に向かうことは難しいと考えられた。ゆえにまず「スタッフが今,困っていること」を抽出し,解決に向けた行動(定期的な学修会と事例検討によるケアの振り返り)の実施,評価(質問紙調査の実施)を行い,徐々に「自己決定」に焦点を当てていくこととした。2018年12月にスタッフに対する1回目の質問紙調査を実施し,現時点での困りごとは「意思疎通が難しい」「指示・説明が伝わりにくい」「介護抵抗・援助者への暴力がある」などであった。現在計3回の学修会を実施しており,今後も継続していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
・自己決定支援介入の効果を検証する中で,追加調査の必要性がでたため,介護老人保健施設において追加調査を実施した ・アクションリサーチとして共同研究を実施できる施設の選定に時間を要した
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Strategy for Future Research Activity |
2018年度に実施したスタッフへの質問紙調査の結果から,研究者間で現状を分析し,2019年度の研究の進め方を次のように計画している。 ①学修会の進め方としては,質問紙調査の中で「ケアが困難と感じる理由」「今後希望する研修会のテーマ」として挙がっていた内容の中からテーマを選定し,講義と事例検討を組み合わせて実施する。勤務状況によっては学修会に参加が難しいスタッフが居るため,多くのスタッフが参加できるように検討する。また,現時点では学修会の企画・運営は研究者が主体となっておこなっているが,徐々に,現場スタッフが主体となった学修会の実施を促していきたいと考えている。 ②取り組みの評価としては,4~5か月毎の質問紙調査を実施する。次回は5~6月に実施予定である。
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Causes of Carryover |
研究成果の発表のための学会参加を予定して,旅費を計上していたが,研究実施途中であり,研究の成果発表には至れなかった。2019年度には成果発表のための学会参加を予定しており,旅費を使用する予定である。 学識者から研究結果に対する助言を頂くための謝金,会議費,旅費を計上していたが,研究実施途中であり,研究結果に対する助言を頂くに至らなかった。2019年度は,使用する予定である。
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