2017 Fiscal Year Research-status Report
精神科看護における「患者カルテ」の使用とその治療的効果に関する研究
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16K15975
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Research Institution | The Japanese Red Cross Toyota College of Nursing |
Principal Investigator |
坪之内 千鶴 日本赤十字豊田看護大学, 看護学部, 助教 (90449497)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
古澤 亜矢子 日本福祉大学, 看護学部, 准教授 (20341977)
野村 直樹 名古屋市立大学, 大学院人間文化研究科, 教授 (80264745)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 「患者カルテ」 / オープンダイアローグ / 協働するナラティヴ / ポリフォニー / 精神科看護 / 対話 / 無知の姿勢 / 病いの語り |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、3カ所の研究関連大学及び施設において、研究倫理審査の承認を得た。研究計画書に掲げるデータ収集方法・手順に従い、精神科医師所属長及び精神科外来医師へ研究参加協力の依頼を行い、研究協力施設の精神神経科学講座の医局会で研究の説明を行った。現時点で、予定研究対象者数(10名)に達していない為、引き続き精神科外来医師へ研究対象者(患者)の選定を依頼中である。研究協力の同意を得た患者から随時、患者の語りの記録(「患者カルテ」)を作成し始めている。本研究では、精神科外来医師を除く医療関連従事者へも研究協力の依頼が必要な為、各所属責任者及びスタッフに口頭で説明し、研究の目的、研究方法、倫理的配慮について説明して研究参加を依頼した。 本研究の目的は、患者を支援する人々が集って、対話することが患者の精神状態にどのように影響していくかを明らかにすることである。患者のこれまでの生活上の出来事や経験について、また今後の悩みなど、本人にとって重要なことを「教えて」もらい、その内容を紙面にまとめて「患者カルテ」を作成する。「患者カルテ」に語られた内容からは、外来診療の短かさへの不満としてSNSを利用して人と悩みや不安を共有している話や、薬に代わって気分を楽にしてくれる「患者カルテ」の効用の話が述べられた。その他、「一日も早く病気を治したいから、ぜひ私の話を聞いてもらいたい。話を聞いてもらうと私は良くなると思う」など、「患者カルテ」の作成を強く希望する患者が見られた。「患者カルテ」という方法が、将来の精神科看護の支援を広げる可能性として、どのような資源となりうるか今後も引き続き吟味、検討していく。尚、本年度は、本研究を遂行していくにあたり、精神科外来において、看護師が患者と家族に行っている支援内容について文献検討も行った。この文献研究は、第19回日本赤十字看護学会学術集会にて発表予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究倫理審査を3ヵ所で通すために時間を要したことから、予定研究対象者数(10名)に未だ達していないが、精神科外来医師や看護師スタッフからの理解ある協力が得られているので、今後はより順調に進めていけると考える。尚、本研究のプロセスは2段階を経る計画であるが、具体的に第1段階では、精神科外来に通院している患者の中で、研究協力に同意を得られた患者の、皆に聞いてほしいこと、伝えたい内容を「患者カルテ」として作成することを支援する。第2段階では、「患者カルテ」を用いて合同でミーティング(オープンダイアローグ)を実施することを計画している。第1段階のデータ収集に時を要しており、第2を段階へは夏以降の実施になるかと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
第1段階の語られた内容の記録(「患者カルテ」)の作成は2回程度を予定し、その進行に応じて第2段階の合同ミーティングの実施(2回程度を予定)につなげていく。研究協力が得られた患者については、「患者カルテ」作成の前と後、また合同ミーティングへの参加の前と後に外来担当医に報告し、患者の変化を確認しながら慎重に進めたい。
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Causes of Carryover |
平成29年度は、ケロプダス病院(フィンランド)の視察研修を実施する予定であった。視察の理由は、現地におけるオープンダイアローグの見学と、これまでの調査から得られた内容について、ケロプダス病院のスタッフとの間で意見交換を行うことであった。しかし、調査の進行が遅れていたため、調査旅費等一部が次年度使用額に生じた主な理由である。よって次年度に調査旅費を繰り越し、視察研修を実施したいと考えている。
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