2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K16008
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
大久保 文哉 九州大学, 基幹教育院, 助教 (40608824)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 化学反応オートマトン / 決定性 / 可逆性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、これまでの研究で開発してきた化学反応系の計算モデルである化学反応オートマトン(CRA)について、決定性計算の性質を明らかにし、化学反応系の設計手法の開発に貢献することである。CRAは、化学反応系における反応系列の性質を明らかにするため、多重集合書き換え系による言語受理モデルとして定義されている。CRAの決定性計算の性質を明らかにすることは、計算理論・化学反応設計論の両側面から重要な課題である。 2017年度は、前年度に定義を行った決定性CRAと可逆性CRAについて、さらなる考察を行った。決定性CRAについて、空の入力を許す場合(λ-DCRAsq)と許さない場合(DCRAsq)の計算クラスを、可逆性CRAについて、空の入力を許す場合(λ-RCRAsq)と許さない場合(RCRAsq)の計算クラスを取り上げた。さらに、決定性かつ可逆性CRAについても、空の入力を許す場合(λ-DRCRAsq)と許さない場合(DRCRAsq)の計算クラスを考察した。 特にDRCRAsqについては、Angluin (1982) によって定義されている Zero-Reversible Regular Languages (revREG) のクラスを包括していることを示した。revREGは正例からオートマトンの遷移規則を極限学習できるクラスとして知られており、DRCRAsqにおける極限学習を考える際の足がかりにすることができると期待される。また、DRCRAsqには一般の正則言語ではない言語が含まれていることも示した。 これらの結果は前年度の結果と合わせて、書籍 "Reversibility and Universality” (Springer International Publishing) のBook Chapterとして公開した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究計画における(1)決定性CRAの基本的性質の解明については、当初の計画にはなかった可逆性CRAとの比較等を行うことができた。しかし、決定問題や閉包性についてはまだ明らかにすることができていない。これらにおける結果は、CRAにおけるアルゴリズム開発において必要であると考えられるため、来年度以降の課題として進めていく予定である。(2)種々のアルゴリズムの開発については、正例から極限学習できるクラスであるrevREGとの類似性から、決定性CRAにおける極限学習の可能性を考察することができた。これは次年度におけるアルゴリズムの開発において、有用であると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度においては、望ましい挙動を実現する決定性CRAの合成・分解のための理論とアルゴリズムを開発することを目指す。決定性CRAの合成を行った際の挙動を考察するために、前年度行うことができなかった決定問題や閉包性についても検討を行う。また、今年度得られた結果から、決定性CRAにおける極限学習の可能性を考察する。
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Causes of Carryover |
当初計画では、本年度の研究成果については国際会議で発表する予定だった。しかし、成果をBook Chapterとして公表する機会を得たことに加え、平成30年度に開催される2つの国際会議で反応オートマトンに関連する招待講演を依頼された( 1st International Workshop on Reaction Systems, Computability in Europe 2018)。次年度に、これらの国際会議で研究成果を公表するための旅費を確保するため、本年度の使用を見送ることとした。
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Research Products
(1 results)