2021 Fiscal Year Research-status Report
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16K16008
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
大久保 文哉 九州大学, システム情報科学研究院, 准教授 (40608824)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 化学反応オートマトン / 化学反応文法 / 分子計算 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、これまでの研究で開発してきた化学反応系の計算モデルである化学反応オートマトン(CRA)について、決定性計算の性質を明らかにし、化学反応系の設計手法の開発に貢献することである。CRAは、化学反応系における反応系列の性質を明らかにするため、多重集合書き換え系による言語受理モデルとして定義されている。CRAの決定性計算の性質を明らかにすることは、計算理論・化学反応設計論の両側面から重要な課題である。
2021年度は化学反応オートマトン(CRA)における反応系列の性質を,既存の形式言語理論における結果と比較するため,CRAと等価なモデルであるChemical Reaction Regular Grammar(CRRG)を提案し,その解析を行なった.また,CRRGにおいて形式文法理論における制限付き書き換えモデルと同様の拡張を行い,文脈自由文法における制限付き書き換えモデルとの違いを明らかにした.さらに,化学反応系における並列性に関して条件を付与して計算を行う新しい方法であるmaximal-sequential mannerを提案し,この方法を用いたCRRGはTuring完全であることを示した.これらの結果は国際学術雑誌であるNew Generation Computing誌に掲載された.
また、単純に分子数を考慮したモデルでCFGを模倣することは難しいことが示唆されていたことから、前年度より研究対象としている分子を文字列という構造を持った対象としたときのモデルについて考察をさらに進めている。特に、文字列における長さ1の挿入演算と、有限言語とのL-reductionという演算を通して、CFGを特徴付けられることを示した。これらの結果は、分野内において著名な国際学術雑誌であるActa Informatica誌に掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナウイルス流行の影響によって研究発表等の計画に遅延が生じたため、当初の計画を延長した。 前年度の研究の推進方策に記載した課題であるCRAに対して様々な機能を付与することについては,CRAと等価な形式文法であるCRRGを開発することによって,当初想定していた計画に沿って研究を実施し,国際学術雑誌へその結果を掲載することができた.また,前年度に研究対象とした分子を文字列という構造を持った対象としたときのモデルについて,さらに研究を進めることができた.他方,CRAのある尺度における複雑さの導入については,研究が遅れている.
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Strategy for Future Research Activity |
以下の2つの方針で研究を推進していく。 まずは、2021年度に新たに開発したCRRGについてさらに考察を行う.特にCRRGは形式文法において基礎的なモデルである正規文法を元にして構成されているが,その他の文法を採用した場合について,その性質を明らかにする必要がある. また,CRAのある尺度における複雑さを制限することで得られるモデルについてその性質を模索する。これは、文脈自由文法などの既知の計算モデルとの比較に加え、これまでの研究成果であるCRAの合成・分解の理論への応用を探究する上で重要である。
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Causes of Carryover |
コロナウイルス流行の影響が今年度もおさまらなかったことにより、国内学会や国際会議への旅費の利用はなく、当初計上していた海外出張経費を執行することができなかった。本年度の研究成果の発表は国際学術雑誌への2本の論文の掲載にて行なった.次年度の予算は、論文発表準備における英文校正等の経費や、状況が許せば学会や国際会議への出張費及び登録費等に充てる予定である。
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Research Products
(2 results)