2018 Fiscal Year Research-status Report
頑健なネットワークの設計に向けた組合せ最適化理論の研究
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16K16010
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小林 佑輔 京都大学, 数理解析研究所, 准教授 (40581591)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | アルゴリズム / 組合せ最適化 / グラフアルゴリズム |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の主要な成果の1つは,最小スパナー問題と呼ばれる,与えられたネットワークから距離を近似的に保ちつつ辺を減らす問題についてのものである.より正確には,指定された正整数 t に対してどの2点間の距離も元の距離の高々 t 倍にしかならない,という制約の下でできる限り多くの辺を取り除く問題が最小スパナー問題である.この問題は様々なアルゴリズムの前処理として重要であるだけでなく,現在の規模のネットワークが維持できないときにどのようにネットワークを縮小するかをモデル化しているという意味でも重要である.この問題は一般にはNP困難であることが古くから知られていたが,平面グラフ上の問題の複雑度に関しては部分的な結果のみしか知られていなかった.本研究では,平面グラフ上の最小スパナー問題の計算複雑度をすべて明らかにし,非自明なケースではすべてNP困難であることを示した.また,一般グラフ上の最小スパナー問題に対して,取り除く辺数をパラメータとして固定パラメータアルゴリズムを提案した.これは,取り除く辺数が少ないときには提案アルゴリズムが効率的に動くことを意味している. また,2点素パス問題の拡張に対する効率的アルゴリズムを提案した.点素パス問題とは,グラフ上で指定されたいくつかの頂点対を互いに頂点を共有しないパスで繋ぐ問題であり,交通網やVLSIのモデル化を動機として理論・応用の両面から盛んに研究されている問題である.本研究では,選ぶパスに長さの制約を課した点素最短パス問題を扱い,ある種の問題に対する多項式時間アルゴリズムを与えている.また,点素パス問題の拡張である多品種流問題に対しても,近似アルゴリズムを与えている. その他に,電力供給をモデル化した最大供給率問題に対する効率的なアルゴリズムの提案も行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
最小スパナー問題に対して,長らく未解決であった計算複雑度を解明したことは重要な成果であるといえる.それ以外にも,最短点素パス問題,多品種流問題,最大供給率問題など,実社会の問題のモデル化として現れる様々な最適化問題に対してアルゴリズムの設計および解析に成功しており,研究課題はおおむね順調に進展していると判断する.特に,多品種流問題を扱った論文 "All-or-nothing multicommodity flow problem with bounded fractionality in planar graphs" は,アルゴリズム設計のトップジャーナルである SIAM Journal on Computing に採録されており,その評価の高さを示している.
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Strategy for Future Research Activity |
ネットワークの頑健性をモデル化することで生じる様々な組合せ最適化問題に対してアルゴリズム設計を行う.特に,最小スパナー問題に関連しより現実に即しているモデルとして,得られたネットワーク上での距離と元の距離との差に制約を加えた下でできる限り多くの辺を取り除く問題である加法的最小スパナー問題を扱う.また,2017年度に会議録として出版された成果である重み付き線形マトロイドパリティ問題について,引き続きアルゴリズムの研究を深め,各種問題への応用を探る.
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Causes of Carryover |
2018年度中の研究成果が2019年5月に行われる国際会議AAMASに採択され発表することになったためその参加費用にあてる予定である.
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