2017 Fiscal Year Research-status Report
最適な治療レジメを選択する多段階ランダム化試験デザインと推測手法の開発
Project/Area Number |
16K16015
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
篠崎 智大 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 助教 (60644482)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 臨床試験 / 統計的因果推論 / 個別化医療 / 動的治療レジメ / セミパラメトリック推測 |
Outline of Annual Research Achievements |
医学研究や医療政策における「個別化医療」として、バイオマーカーや遺伝子に応じて治療効果の高い患者と低い患者を峻別するというコンセプトに対する理解は、専門家や一般社会を問わず近年とみに広がってきている。一方で、治療に応じて変化するバイオマーカーの値や、治療へのレスポンスに基づいて適応的に治療方針(regime, レジメ)を選択する「動的な治療レジメ」開発における統計学の役割については、医学分野と統計科学分野の双方において理解を得られているとは言い難いのが現状である。本研究課題は、このような動的治療レジメの中でも、中長期的にターゲットとするアウトカムを最大化(あるいは最小化)するような「最適なレジメ」を選択するための統計解析手法と、それらの使用を前提とした研究デザイン、特に多段階にわたるランダム化試験デザインを開発することを目的としている。 当然ながら、上記のような多段階ランダム化試験から得られたデータ自体はわれわれの手元にないため、観察研究あるいは別のデザインの臨床試験から得られたデータから動的治療レジメの因果効果を正しく推定する統計手法の開発・評価が目下の課題である。Shinozaki, Matsuyama and Mukai "Robust and efficient estimation of structural nested mean models in randomized trials with partial compliance"(投稿中)ではそのような手法の一つとしてランダム化試験におけるg-推定法の効果的な拡張を与え、promisingな結果を得ている。また、統計的因果推論一般に関する研究、特に傾向スコアを用いた観察研究データの解析についてもいくつかの知見を得られている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
提案した手法に関しては理論とシミュレーション実験結果、およびデータ解析結果をまとめられたものの、いまだ公表には至っていない。その他の研究結果も、論文にまとめられたが査読中のもの(Shinozaki and Nojima "Misuse of regression adjustment for additional confounders following propensity-score balancing";Shinozaki and Matsuyama "Pairwise stratified Cox models for overall C of survival prediction models")、preliminaryな結果で止まっており論文化に至っていないもの(Shinozaki, Hagiwara and Matsuyama "G-estimation of generalized linear models using propensity score-based weights";Shinozaki et al. "Parametric g-formula to estimate direct effects in dynamic treatment-switching strategy: application to atorvastain effects bypassing lipid-lowering in elderly type 2 diabetic patients")があり、研究期間終了に向けてこれらの投稿・出版と、多段階ランダム化試験デザインの提案研究を急ぎ進めていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
現在投稿中の論文、ならびに論文化に至っていないもののpreliminaryな結果を得られている研究については、共著者と連携して引き続き迅速な出版を目指して作業にあたる。提案法に関しては、適当な質・量を含むデータ(特にランダム化を逐次的に実施している臨床試験データ)の借用の可能性を探る。このようなデータを研究期間内に取得・借用することが困難であることも考えられるため、数値実験を通した性能評価により論文としてまとめることも視野に入れている。そのためのコンピュータを研究費から購入することも考えている。
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Causes of Carryover |
医学統計・計量生物分野の国際学会の一つであるInternational Biometric Societyの定期会議は2年おきに実施される。2017年度は開催がなかったため、2018年度に参加できるよう一部を翌年に繰り越した。
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