2016 Fiscal Year Research-status Report
層別化された分割表に対する有限混合モデルを用いた検定の構築と発展
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16K16021
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
下川 朝有 東京理科大学, 理学部第二部数学科, 助教 (80756297)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 二群比較 / 分割表 / オッズ比 / タイプIエラー / 層別解析 / デルタ法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では層別化された2×2の分割表の二群比較の検定のために,有限混合モデルを用いた新たな検定手法に関する研究を行っている.対象年度における研究目標は,「母集団内における真の層比率が既知・未知の場合における有限混合モデルを用いた検定統計量の構築」であった. この研究目標を達成するため,まず初めに,各層に含まれる被験者数は多項分布に従ってランダムに定まると仮定を置いた.多くの医学的試験において,各層に含まれる被験者数を事前に固定した数通りに集めることは困難であり,この仮定は非常に現実問題に沿ったものとなっている.この仮定の下,事前に二群への治療割り当て比が固定されている場合(pre-stratification),固定されていない場合(post-stratification)のそれぞれにおける,二群間のオッズ比は同等であるかの検定統計量の導出を試みた. 検定統計量に関して,正確法では計算量が膨大になってしまうため,今年度はデルタ法を用いる近似による統計量の導出を行った.導出した統計量に関する漸近的な性質及び,層別化された分割表の解析に広く用いられるコクラン検定との有限標本下における性質の比較を,理論的,またシミュレーションを用いて行った.これらの結果から,提案手法は現実的な仮定下でより適しており,特にタイプIエラーを従来の手法より良くコントロールしていることが分かった.最後に,現実の医療データを用いて提案手法の有意性について示した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
対象年度における研究目標は,「母集団内における真の層比率が既知・未知の場合における有限混合モデルを用いた検定統計量の構築」であった. まず初めに「検定統計量の数式的な導出」において,独立ではない複数の確率変数の関数の分散を求める必要があったが,研究計画時に予想していた通り,これらは条件付き確率に係る定義・定理を複合的に用いる事で導出が可能であった.得られた統計量の性質は,当初の計画では「標本数無限大の仮定下におけるその漸近的性質の理論的検討」のみであったが,これに加えて,有限標本における従来の代表手法(コクラン検定)との理論的比較も行うことが出来た. 続いて「シミュレーションを用いた,具体的な有限標本数下における性質の考察」も問題なく完了し,予想通りの結果を得ることが出来た.「シミュレーションを用いたコクラン検定との比較」に関しても予定通りに進み,良い結果を得ることが出来た. 最後に予定していた「実データへの適用」に関しても滞りなく終えることが出来た. これらの結果に加えて,この研究を行っていくうえで得られた知識に基づき,二値の時系列データに対する手法の拡張,また機械学習を用いた手法の提案等を行った.ここで得られた各成果は,随時学会発表を通して発信した.加えて論文作成も行った. 対象年度の終盤では,次年度の達成目標である「層別化された2×2の分割表を用いる生存データへの検定手法への拡張」に取り掛かった.
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Strategy for Future Research Activity |
29年度では研究計画時の予定通り,「層別化された2×2の分割表を用いる生存データへの検定手法への拡張」に関する研究を完了することを目標とする. まず初めに,「生存データの各イベント発生時点における層比率を考慮した検定統計量の導出」を行う.これは最初,定数ハザード等の単純な仮定から始め,最終的にはノンパラメトリック,もしくはCoxモデルに基づくセミパラメトリックなモデル下での検定統計量の構築を目標とする. 続いて,「提案統計量の理論的検討」を行う.理論的検討では無限標本下での漸近的性質を導出し,可能ならば有限標本下での他の一般的な手法(例えばログランク検定)との漸近的性質の比較を行う.理論的検討に続き,さらに「提案統計量のシミュレーションによる検討」を行う.このシミュレーションでは現実的に広く起こり得る幾つかの生存時間のモデルを仮定し行うことを考えている.具体的には,定数ハザード,そして時間に対し増加,減少,もしくはバスタブ型の変化を見せるハザードを仮定しシミュレーションを行いたいと考えている. 最後に「実データへの適用と結果の解釈」を行う予定である.ここでは生存モデルが広く利用される,がん患者のデータに対して提案手法の適用を行っていきたいと考えている. この一連の研究で得られた成果は,随時学会発表を通して広く配信していく予定である.加えて研究のまとめとして,論文の作成を行い,投稿する予定である.
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Causes of Carryover |
使用予定であった国内会議の開催地が近場であったため,旅費が当初予定していた額よりも下回った.また購入予定であった図書を無料で手に入れることができたこと,そして英文校正サービス費用及び,論文投稿費用がかからなかったためである.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初予定していなかった範囲にまで研究が及んだため,広がった分野の書籍購入費,及び,予定していなかった学会への出張費にあてたいと考えている.具体的には,当初の計画に加え,新たに機械学習分野の図書を5冊,そして国際会議を1回増やしたいと考えている.
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