2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K16061
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Research Institution | Yamanashi Eiwa College |
Principal Investigator |
島内 宏和 山梨英和大学, 人間文化学部, 助教 (90759200)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 極値的擬等角写像 / 数値擬等角写像 / 擬等角写像 |
Outline of Annual Research Achievements |
極値的擬等角写像の可視化手法について,研究計画に従いつつ,軌道を修正しながら,以下のような研究を行った. (1) 2つの単連結領域と境界対応が与えられたとき,対応する極値的擬等角写像を近似する,区分線形写像の構成方法について考察した.メキシコ国立工科大学高等研究所のポーター教授と共同で提案した単位円板間の擬等角写像の構成手法のアイディアを応用し,定義域のメッシュと区分線形写像のベルトラミ係数の情報,および境界対応を用いて,線形系を試験的に複数構成した.構成した線形系は優決定系となっていたため,最小自乗解を近似解として採用した.メッシュと構築した線形系の最小二乗解から誘導される区分線形写像にて,極値的擬等角写像を近似する.予め真の解がわかっているケースを用いて,構成した区分線形写像と真解について,頂点での誤差やベルトラミ係数の誤差を比較した.ソフトウェア Wolfram Mathematica 11 を導入し,アルゴリズムを改良しながら多数の数値実験を行い,比較的良好な数値実験結果が得られるアルゴリズムを構成した.現在,近似解の収束性などについて引き続き調べている.構築したアルゴリズムについては,今後学会等にて口頭発表をする予定である. (2) Radial Loewner 方程式の擬等角写像への応用可能性に着目し,その数値計算手法について研究した.Radial Loewner 方程式の解が単位円板から拡張する領域族への等角写像族となることに着目して,その近似多項式族を構成する方法について検討した.最終的に,シンプルな構成アルゴリズムを見いだせたため,現在論文としてまとめ投稿中である.また,アルゴリズムとその性質,数値実験の結果などを等角写像・値分布論合同研究集会と2017年度日本数学会年会などの場で発表した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
極値的擬等角写像の可視化について,「研究実績の概要」で述べたような形で研究を進めている.本研究は,以下のような理由により,概ね順調に推移していると考えている. (1) 「研究実績の概要」で述べた,ポーター教授と共同で提案した単位円板間の擬等角写像の構成手法のアイディアを応用した区分線形写像の構成手法に関しては,実験的には良好なアルゴリズムが得られている.現在はその収束性や誤差評価について調べている段階である.構築したアルゴリズムを用いると,描画が比較的難しい例でも描けるため,メッシュを細かくしていけば真の解へ収束するのではないかと期待している.構築したアルゴリズムとその実験結果については,セミナーや学会等にて発表をしたいと考えている. (2) 「研究実績の概要」でも述べた通り,Radial Loewner 方程式の擬等角写像への応用可能性に気がついたため,その数値的構成手法についても考察した.Radial Loewner 流は時間でパラメトライズされた等角写像族を生成するが,時間ごとの等角写像は冪級数で表示することができる.そこで,時間ごとの冪級数表示とLoewner方程式より得られる係数に関する公式を離散化して,その近似値を計算するための再帰公式を構築した.Mathematicaを用いて,構築した再起公式により時間ごとの冪級数の係数の近似値を求め,解を可視化した.特に,解を具体的に記述することができるケースを用いて数値実験を行い,解の検証を行った.近似解の性質などについて調べた上で,複数の数値実験の例などとあわせて論文にまとめ,現在投稿中である.得られている結果については,ヨーロッパで開催される国際会議にて発表する予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
成果を国際会議などの場で発表しつつ,引き続き収束性の保証された極値的擬等角写像の数値的構成アルゴリズムの構築を目指して研究を進める. (1) 「研究実績の概要」で述べた現在得られている極値的擬等角写像の可視化アルゴリズムについて,メッシュを細かくしていったときに近似解が極値的擬等角写像へ収束するか調べる.収束性を調べるにあたり,ベルトラミ係数に適当なレギュラリティを仮定した上で,構築した線形系の残差ベクトルを評価する.必要であれば,境界条件に修正を加える,最小二乗解の採用をやめて別の最適解を検討する,メッシュと線形系に変更を加えて解が存在するような系を模索するなど,区分線形同相写像が得られるよう臨機応変にあらゆる策を講じたい.区分線形同相写像が得られる場合は,近似解の列が擬等角写像の列となり,擬等角写像族の normality など様々な性質を応用することができる.また,擬等角写像についての最新の結果を応用できる可能性もあるので,引き続き調査も並行して行う.極限関数が対応する極値的擬等角写像となっているかどうかを調べる際には,真の解と近似解のベルトラミ係数の誤差の評価が鍵となると考えている. (2) 「概ね順調に進展の理由」で述べた Radial Loewner 流について,構成したアルゴリズムと近似解に関する再起公式の性質,数値実験の結果などについて,国際会議において口頭発表で公開を予定している.引き続き,誤差に関する評価や計算量などについても調べていく.また,構成に関する新たな考察も行っているため,Mathematica を活用してアルゴリズムを実装して数値実験を行い,さらなる展開を目指したい.
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Research Products
(2 results)