2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K16066
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
伯田 恵輔 島根大学, 総合理工学研究科, 助教 (90587099)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | アフィン代数幾何 / 多変数多項式暗号 / 耐量子計算機暗号 / 有限体 / 置換 |
Outline of Annual Research Achievements |
耐量子計算機暗号の有力候補の一つである多変数多項式暗号の安全性は,多変数多項式の求解問題(MQ問題)の困難性を根拠にしており,その安全性評価の研究は,これまでMQ問題を直接計算する攻撃手法(グレブナ基底攻撃,MinRank攻撃など)に主眼が置かれていた。近年,多項式写像を線形変換と非線形変換の合成の形に分解する研究が発表され始めている。本研究課題は,多変数多項式暗号の安全性評価を目的として,上記の既存結果の流れを汲む新たな攻撃手法として,MQ問題を直接計算するのではなく,多項式自己同型写像の逆写像を計算する攻撃としてTame分解アルゴリズムを考察し,多変数多項式暗号の新たな安全性評価指標の確立を目指している。 2017年度は,座標の各成分にp乗Frobenius写像を施す多項式写像を考察し,上記多項式写像の置換としての偶奇性を求める一般公式を導出した。また,tame automorphismに対し,上記多項式写像を合成することによる多変数多項式暗号の安全性強化手法が知られているが,上記の安全性強化手法に対する安全性を再考し,暗号学的に妥当と考えられる条件下において,上記手法の安全性が実際に強化されるための必要条件を導いた。これらの結果は,国内研究集会で発表を行うとともに,海外学術論文誌に投稿するために論文を準備中である。また,一般変数の多項式同型写像に対するTame分解問題に取り組むための足掛かりとして,有限体上のNagata automorphismに対し,置換として等しい多項式自己同型写像のTame分解を具体的に求めた。本結果については,海外学術論文誌(Journal of Mathematics Research)に投稿し,採録された。さらに,有限体上の順部分群の生成元について考察を行い,標数0の場合に成立するDerksenの定理は,標数2の素体の場合には成立しないことを証明した。この結果については海外学術論文誌に投稿した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2017年度は,本研究テーマに関して,海外学術論文誌に1件の論文を投稿し,採録された。また,上記とは異なる研究成果を国内研究集会で発表し,海外学術論文誌に投稿するために論文を準備中である。さらに,前述とは異なる研究結果も得られ,海外学術論文誌に投稿した。これらの研究成果は当初の計画通りであるため,おおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,平成29年度に得られた安全性強化手法に対する安全性再考の結果において,暗号学的に妥当と考えられる仮定の成立条件について考察を行うとともに,一般のTame分解問題の計算量的困難性に関する考察を行う。
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Causes of Carryover |
論文掲載料の支払い時期や年度末の出張などが影響して少額分を次年度使用額とすることになったが,特に研究計画に問題が発生しているわけではないため,予定どおり研究を遂行するために使用する。
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