2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K16068
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
山田 翔太 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 情報技術研究部門, 研究員 (70750834)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 公開鍵暗号技術 / IDベース暗号 / 電子署名 / 準同型性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は,従来の準同型署名を拡張し,異なる署名鍵によって分散的に生成された署名を,真正性を損なわずに準同型処理を施すことができ,さらに準同型処理の実行に関してもアクセス制御が可能であるような技術である「多ユーザ関数型準同型署名」を創出することである.本研究で目指す技術が完成することにより,個人の健康情報等の機密性の高いデータから有用な知見を,個人のプライバシの保護と得られた知見の真正性を両立しつつ,抽出することが可能となる. 本研究では,当該課題への足がかりとして,IDベース暗号の設計に取り組み,新方式を提案した. IDベース暗号は従来の公開鍵暗号と異なり,任意の文字列(メールアドレス等)に向けて暗号化が可能な技術であり,アクセス制御技術である関数型暗号の特殊なケースである.また,通常の電子署名に容易に変換が可能であり,その意味で電子署名とも深い関連のある技術である.本年度はEurocrypt 2016にて提案方式を発表し,さらに,その改善方式をAsiacrypt 2016にて発表した. また,当該年度は,フランスのENS Lyonに二週間滞在し,研究交流を行なった.滞在中は,上述のEurocryptにて発表した方式に関してゼミ形式で発表を行い,また,準同型署名を含む関連技術に関して,Benoit Libert氏らと議論を行なった. 上記のIDベース暗号に関する成果は,より具体的には以下の通りである.従来のIDベース暗号は,信頼性の非常に高い数学的仮定に基づく安全性を達成しようとすると,(1)選択的安全性という弱い安全性のみを満たしているか,(2)適応的安全性という高い安全性を満たしているが,公開鍵等のパラメータが大きいか,のどちらかであった.当該研究では,適応的安全性を達成しつつも,公開鍵長が従来よりも漸近的に短い方式を提案した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当研究の目的は,適切なアクセス制御機能,プライバシ保護機能,異なる署名鍵による署名同士の演算を含む柔軟な準同型処理を全て可能にする電子署名技術の創出を行なうことである.本年度は足がかりとして,目標とする技術に関連が深いIDベース暗号の研究を行った.研究の結果,当該分野におけるトップ会議であるAsiacryptに論文が採録され,IF付き英文論文誌に論文が一本採録されるた.これは,予期していた以上の成果であり,当初の計画以上に研究は進展しているといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は,IDベース暗号の効率を漸近的に改善する方法を提案した.提案方式は,あくまで漸近的な効率性は改善しているだけであり(すなわち,安全性の基準を非常に高めたときに従来方式よりも効率的ということである),現実的なパラメータ設定の条件下では既存方式よりも効率的とは限らない.今後は,現実的なパラメータ設定においても,既存方式よりも効率的な方式の研究を目指す.また,当該技術が既に有している準同型を拡張することにより,準同型署名への拡張を試みるなどの方針により研究を行う.
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Causes of Carryover |
内部資金を併用したため.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
来年度以降の国内・国際会議への出張などに利用する予定.
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