2016 Fiscal Year Research-status Report
共感的コミュニケーションの基礎を成す身体的同調の脳神経基盤の解明
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16K16078
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Research Institution | Aichi University |
Principal Investigator |
井藤 寛志 愛知大学, 文学部, 准教授 (20464141)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 自動的模倣 / ミラーニューロンシステム / 同調 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は主に、2者間で行うジャンケンを実験課題として用い、ジャンケンで対戦相手の出した手の運動(グー、ジョキ、パー)への無意識的な同調の心的メカニズムと、そのメカニズムに関与する脳神経基盤を調べた。研究の具体的な内容を以下に示す。 1)運動への同調を調べるために、2者間で行うジャンケン課題を用いた実験(N=43)を実施した。この課題では、実験参加者2名が対面してジャンケンを行い、対戦相手の手の運動に同調する行動が起こるか否かを検討した。その際に、目隠しの有無を操作した。両者が目隠しをしてジャンケンを行えば、偶然「あいこ」になる確率は約33%になると予測される。これに対して、一方の参加者が目隠しをして、もう一方の参加者のみが対戦相手の運動を見ることができる条件では、見えている参加者は思わず無意識的に相手の手に同調してしまい「あいこ」になる確率が偶然よりも高くなると予測された。実験の結果、イギリスで実施された先行研究の結果とは異なり、戦略的な勝利が求められる状況下では、無意識的な同調(模倣)は生じないことが明らかになった。この実験結果は2016年9月の日本認知科学会および2017年1月の国際応用記憶認知学会の年次総会にて報告した。 2)身体的な同調が起こることが確認された課題として指定されたキーを順に人差し指で押していく課題を用いた。その課題を行っている時の実験参加者の脳活動をfNIRSを用いて計測する予備的実験(N=15)を2017年1月に実施した。実験結果は現在分析中であり、今後、日本心理学会の年次総会および国際fNIRS学会で報告予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画書において平成28年度に実施予定だった2者間でのジャンケン課題を用いた行動実験と、指でキーを順に押していく動作を模倣する課題中の脳活動を計測するfNIRS実験を予定通り実施した。よって、研究は概ね順調に進展していると考えられる。ただし、計画の段階で自動的模倣が生じると考えられていたジャンケン課題では、先行研究で報告されている結果が再現されなかったため、別課題を用いる必要が生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度以降の計画は、2名の同調中の脳活動をfNIRSを用いて同時計測(同時計測の本実験)を行うことである。 平成29年度には、愛知大学において前年度に検討した無意識的模倣が生じる課題を用いて、fNIRS装置の計測チャンネルを2名の頭部に分割して配置し、2者間で同調している時の脳活動を同時計測する。同時計測によって、単独の脳活動では知ることが難しい複数人の脳の同期活動を背景とした同調の脳神経基盤を検討できる。平成29年度後期には、運動への同調のメカニズムとその脳神経基盤の整理と研究の総括を行う予定である。
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Causes of Carryover |
当該年度に実施したfNIRS実験において、fNIRS装置一式(脳機能イメージング装置本体、計測用ホルダ、三次元位置計測システム)のレンタル費用が当初予定額よりも値上がりし、レンタル期間を2週間から1週間に短縮してレンタルしたため結果的に当初計画予算を下回ることになった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、当該年度の未使用額をfNIRS装置のレンタル費用に充てることで、当初計画のレンタル期間(2週間)を確保し、fNIRS実験を実施する予定である。
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Research Products
(2 results)