2017 Fiscal Year Research-status Report
ハードウェア指向物体認識アルゴリズムとその実装方式の研究
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16K16085
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
劉 載勲 大阪大学, 情報科学研究科, 助教 (70726976)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 物体検出 / 組込みシステム / 輝度勾配ヒストグラム特徴記述子 / 集約チャンネル特徴 / ブースティング決定木 / FPGA実装 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は最新の物体認識アルゴリズムの研究成果をハードウェアに適用し,高精度かつ高速な物体認識システムを実現することを目的とする.そのために最新物体認識アルゴリズムの一つである集約チャンネル特徴とブースティング決定木に注目し,ハードウェア指向物体認識アルゴリズムとその実装方式について研究している.平成28年度までの研究では,ハードウェア実装向け輝度勾配ヒストグラムの計算手法とブースティング決定木の並列演算手法について研究を行った.平成29年度の研究では,その研究成果に基づく物体検出用の組込みシステムをプログラム可能なハードウェアであるFPGA上に実現した.平成29年度の研究実績は以下の3つの項目にまとめられる. (1)ハードウェア向け輝度勾配ヒストグラム手法に基づく特徴抽出装置の実装 (特許出願中,情報処理学会の論文誌の9月特集号に条件付き採録) (2)ブースティング決定木の並列演算装置の実装 (情報処理学会の論文誌の11月特集号に条件付き採録) (3)物体検出用プロトタイプシステムの FPGA 実装 項目(1)と(2)の研究実績は平成28年の研究成果で得られたハードウェア指向の特徴抽出アルゴリズムとブースティング決定木の並列処理機構をハードウェア記述言語を用いてレジスター転送レベルのコーディングを行い,その動作シミュレーションと論理合成によって有効性を実証したものである.各研究成果はそれぞれ情報処理学会の論文誌の9月特集号と11月特集号に投稿されており,いずれも条件付き採録の結果を得ている.さらに項目(3)では,(1)と(2)の成果を基に物体検出用プロトタイプシステムの FPGA 実装を行い,HDMI入力に対する物体検出の実時間処理システムを実現した.本成果は国際会議と後論文誌への投稿を予定している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究そのものは順調に進んでいるが,論文誌による研究成果の発信という点では少し遅れている. ブースティング決定木の並列処理の研究では,タスクスケジューリングによりメモリアクセスの競合を防ぐことでブースティング決定木の処理における高い並列度を実現した.その結果,処理性能として秒間23万の入力サンプルを処理でき,集約チャンネル特徴を用いた既存のハードウェア実装に対して100倍以上の高速化を達成している.これは FullHD の入力画像に対して秒間350フレームの歩行者検出が可能であることを意味しており,FPGA の計算資源の35%程度で実現できることを示した.本成果は情報処理学会の論文誌の9月特集号に投稿し,条件付き採録されている. さらに DV-HOG(decomposed vector histograms of oriented gradient)と命名したハードウェア向けの新たな輝度勾配ヒストグラムの計算手法の研究では,ハードウェア実装により輝度勾配ヒストグラムの情報量を損なうことなく必要な回路面積を従来設計の12分の1に削減している.これにより FullHD 以上の高解像画像を用いる物体認識システムの特徴抽出部を単一の FPGA や ASIC上に実装することを可能にした.本成果は情報処理学会の論文誌の11月特集号に投稿し,条件付き採録されている. 現在はこれらの成果を基に物体検出システムのFPGA実装が完了しており,それを用いた性能テストと改良を行っている.実装したプロトタイプシステムはハードウェアによる高速演算を組込みソフトウェアによって制御することで高速かつ柔軟な物体検出処理を実現している.また識別器のデータを更新することで多様な物体検出にも対応できる.本成果は平成30年度中の国際会議および論文誌投稿を予定している.
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策としては,現在のプロトタイプシステムの処理性能と検出精度の改善に焦点を合わせた研究を考えている.まず処理性能の改善ではハードウェア実装における動作周波数を改善する.現在プロトタイプシステムは100MHzで動作しているが,メモリアクセス部分やデータ処理方法の見なしによってクリティカル・パスの削減が見込まれ,動作周波数の改善が可能であると考えられる.次に検出精度の改善では,学習データの拡充と識別器の性能改善の研究を行う.近年のブースティング決定木による物体検出では木の深さを深くすることによる検出精度の改善が報告されている.しかし,深い決定木はプロトタイプシステムの処理性能を低下させる原因となるため,処理性能を保ちつつ検出精度を改善するための新たな方法を研究する必要がある.そのためタスクスケジューリングやソフトカスケードに更なる処理性能の改善を検討する.
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Research Products
(1 results)