2016 Fiscal Year Research-status Report
セキュアな話者照合のためのポップノイズバランスを考慮したコーパス構築
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16K16088
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
塩田 さやか 首都大学東京, システムデザイン研究科, 助教 (90705039)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 音声信号処理 / 話者照合 / 声の生体検知 / ポップノイズ / 音素情報 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、声を用いた声の生体認証法である話者照合の安全性を向上するための枠組みである「声の生体検知」に関する改善に関する提案を行っている。声の生体検知において最も重要な役割は入力音声が登録話者の音声を再生してセキュリティを破るなりすまし攻撃を防ぐことにある。そのために,人間が発話する際に自然と行う行為として呼気が発声の中に含まれているかを検知することが大きな目的となる。これまでに行われた研究において、発声の途中で呼気が過剰に含まれる場合に収録される音声にはポップノイズというマイク内部で発生するノイズを検出することで非常に高い精度で人間の発声か機械による再生音声なのかを検出することを達成した。しかし、ポップノイズの有無だけの判定は攻撃者が判定方法さえ知ってしまえば破られてしまう簡単な手法であった。そこで本研究ではさらにポップノイズが発生しやすいまたは発生しにくい音素情報について着目し、プロンプト文を設計することで発声する際に必然的に発生してしまうポップノイズの箇所と発生しにくい箇所を設定することを行った。初年度の成果としてはまず、各音素のポップノイズの発生頻度を調査した。人数、性別、収録環境やマイクなどを変え収録を行い、ポップノイズの出現傾向を調査し、よりポップノイズ検出に適した音素のバランスを考慮したプロンプト文を設計し声の生体検知の実験及び話者照合での実験を行った。実験結果よりプロンプト文を設計し用いる法が音素傾向を考慮しない文章と比べてなりすまし攻撃をより正確に防ぐことが可能になることが確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画として、これまでに収録した小規模なポップノイズを含まれる音素から人や環境に依存しにくくかつポップノイズの発生する、しないという傾向が安定して起こる音素についての調査を行い、その結果を元にしたプロンプト文の作成を検討していた。調査の結果、人間の発声の原理通り特定の音素においては発声時に呼気を多く用い、また別の特定の音素においては呼気をほとんど用いないと言った顕著な傾向が現れることが分かった。この傾向をもとにポップノイズの発声頻度を考慮したプロンプト文の設計とその重要性については成果をまとめ研究会において発表を行った。本研究の最終目標は話者照合の性能向上およびなりすまし攻撃への頑健性向上であるため、音素のバランスを考慮する上で話者照合の特定話者モデルを設計するために適切であることも合わせて設計を行い、実験を行っている。当初の予定では、初年度はプロンプト文の設計までを目標としていたが、プロンプト文の設計と声の生体検知への有効性の評価を行い学会での発表を行うところまで計画をすすめることができた。また、プロンプト文セットを用いた音声収録についても着手し、データベース構築としても大きく進展することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策としては、収録した音声データの特性を調査するためにこれまでに行ってきた話者照合システムを新たに構築し、データベース自体の性能を調査することを始めとし、提案した手法を用いることで従来法と比べてどの程度システムの改善が得られるのかなど客観的な尺度による評価を行う。また、研究成果について音声信号処理におけるフラッグシップカンファレンスと言われる国際学会への論文投稿及びここまでの成果をまとめた論文誌への投稿などを計画している。
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Causes of Carryover |
当初の計画より研究が進んだ結果、旅費としての支出が多くなった一方、論文誌への投稿等のその他の支出が予定より少なくなったことが原因である。ただし、研究計画と大きな差異はないため今後も研究計画を予定通り遂行できると思われる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
音声収録等に必要な備品や論文誌への投稿費として使用する予定である。
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