2016 Fiscal Year Research-status Report
多次元画像のスパースフーリエ変換と深層学習の高速化
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16K16092
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
杉本 憲治郎 早稲田大学, 理工学術院(情報生産システム研究科・センター), 助手 (00773483)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 深層学習 / フーリエ変換 / 準線型時間アルゴリズム / 定数時間フィルタ |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度は主に基礎面での研究に注力した。計算量や推定制度などのスパースフーリエ変換の基本性能の向上を目指した研究としては、信号処理シンポジウムにおける発表2件がある。一つ目は、実信号に対する高速なスパースフーリエ変換のアルゴリズムである。我々が普段中心的に扱うデータは多くの場合実数で表現されており、フーリエ変換が取り扱う複素信号よりも一般的であるが、この事実に着目した高速な演算手法である。具体的には実信号のスペクトルが対称性を有する事実に基づき、スペクトルの推定をより少ない計算量で実現できた。二つ目は、スペクトルの推定に失敗するケースを疑似乱数スペクトル順列の性質を活用して削減した手法である。いずれも従来のスパースフーリエ変換と同様の実験条件において、それらに対する計算時間の削減と推定精度の向上をそれぞれ実験的に確認できた。 そのほか、スパースフーリエ変換の内部で基礎的演算として用いられているフィルタの高速化についても検討した。特に短時間スペクトルの性質を活用した高速なガウシアンフィルタと、それを応用したバイラテラルフィルタの高速演算手法に関する成果は対外的にも高く評価され、国際会議3件(うち2件は画像処理分野で世界的に権威ある国際会議IEEE International Conference on Image Processingでの発表)および国内発表3件(うち2件は受賞)の成果を挙げた。スパースフーリエ変換内部ではスペクトルの抽出にGaussian-SincフィルタやDolph-Chebyshevフィルタが用いられるが、これらへの応用が期待される結果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
米国電気電子学会(IEEE)のフラグシップ会議であるInternational Conference on Image Processing (ICIP)での発表2件をはじめ、国際会議発表が計3件、国内発表が計5件の成果を挙げることができたため。加えて受賞2件(IE賞、IMPS優秀論文賞)の成果もあり高い評価を受けた。
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Strategy for Future Research Activity |
基礎面については、スパースフーリエ変換の基本性能の向上がまだまだ重要である。現状でのスパースフーリエ変換のアルゴリズムは信号長が十分に長くスペクトルが非常にスパースな場合でのみ優位性が生じる。また正しくスペクトル推定するには慎重にパラメータを設定する必要もあり、現状ではパラメータが入力信号に強く依存するため簡単に導入できるところまで到達していない。特に実スパースフーリエ変換において、スペクトルが打ち消しあうことで検出不能となるケースについて、聴講の研究者から指摘を受けた。このような問題について今後も引き続き中心的に解決に取り組んでいく。 また応用面については次のように考えている。現状の深層学習、特に畳み込みニューラルネットワーク(CNN)の流れとして、カーネルのサイズを極力小さく(例えば3x3や5x5)した上でより多層に重ねる方向へと発展が続いている。フーリエ変換を通じた畳み込みアルゴリズムはカーネルのサイズが大きい場合に有効な手法であるため、単純にこれを適用するだけでは相性が悪く特に優位性がないという結果になる。したがってより柔軟な視点で、大きなカーネルに基づく高速なCNNの計算法の考案とその優位性の検証、そしてより高度なフィルタに基づくアルゴリズムへの適用するなど、より広い視野で研究を進めることが重要であると考えている。 信号処理・コンピュータビジョン分野の国内外の研究者と議論を通じて、これらの問題を早期に解決することを目指す。
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Causes of Carryover |
ジャーナル論文の作成にやや遅れが生じ、年度をまただいたことで当初予定していた論文の出版費用が浮いたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初の想定と同様にジャーナル論文の出版費用にあてる。
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