2016 Fiscal Year Research-status Report
発色型情報提示手法の大規模空間への拡張に関する研究
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16K16098
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Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
小泉 直也 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 助教 (80742981)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 発色型情報提示 / クロミックインク |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,移動ロボットのエネルギ散布符号化によるクロミックインクの変色スイッチングを利用した大規模発色型情報提示手法を提案する.移動ロボットはiRobot社のRoombaをはじめ,一般家庭にも普及しつつある.本研究ではこれを利用して,床面に一様に塗布されたクロミックインクを変色させることで大規模情報提示を実現する. 発色型情報提示とは,環境光の反射を用いた情報提示手法であり,実物体の色彩をコントロールすることで情報の書き換えを行うものである.既存の発色型情報提示では,レーザーやUVプロジェクターなどのエネルギー投影手法を用いており,空間中に強力なエネルギーを放出してしまうため,大規模化がなされていなかった. そこで本研究では,エネルギー散布の符号化をロボットの制御によって行い,ロボットがエネルギーを運ぶ手法を用いることで,エネルギーの放出による危険性を排除した手法を提案する. 本年度は,アクチュエーターとしてサーボモーターが16個取り付けられたモップ形状のロボットを用いた試作システムを制作した.具体的には,車輪付きロボットに85℃に保たれたヒーターを取り付け,車輪の回転に応じてヒーターの接地点をコントロールすることで描画を行った.さらに,,描画サンプルの屋外太陽光下での見えの確認を行った.屋外での視認性に関する評価としては,視認できる程度の発色変化を実現できていることが確認できた.さらに,環境光によって色彩が調和的に変化する様子も確認できた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究期間内で明らかにしたい点は,①適切なインクの選定,②最小ピクセルサイズの検討,③階調表現の確立,④応用メディアの検討と提案の4点である. 初年度はまず①インクの選定とエネルギー散布方法の検討を実施した.必要となるインクの仕様は,「クロミック特性を有していること」「双安定性を持つこと(外乱でスイッチングしないこと)」「光・熱などの非接触方式で外部エネルギを投影できること」である.そこで双安定性のあるクロミックインクとして,熱で変色するぺんてる社のFrixion Inkや,紫外線で変色する山田化学株式会社のジアリルエテンをベースとしたP型フォトクロミック塗料などを検討した.ロボットが移動しながらエネルギーを散布するため,移動によるエネルギーの累積と発色の関係が課題となり.エネルギーとインクの発色の関係性を求め,よりスイッチングが急激に生じるインクを選択する必要があり,初年度は双安定性クロミックインクを使用した. また符号化エネルギー散布のためのロボット制御ソフトウェアの設計開発を行った.ハードウェアとしてロボットの移動制御システムとエネルギーの投影制御システムを構築した.本年度はヒーターを直接設置する手法によって発色制御を実施したが,伝熱の損失が大きく,描画速度が著しく遅れた.このため,来年度以降の課題として,熱風等による表面への加熱と色センサによる変色の確認が必要である点を確認した.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,階調表現に向けた最小ピクセルサイズの検討と網点設計を中心に行う.階調表現の実現のためには,網点設計が重要となる.網点とは印刷時のドット模様のことである.印刷メディアの多くはこの網点によって濃淡の階調を表現しており,本研究でも同様に網点による階調表現の実現を目指す.ロボットの移動速度制御とエネルギー投影タイミングの制御を,初年度のインク特性の評価にしたがって構築を行う.特にエネルギーの漏れやボケなどへの対応を踏まえて実施する.その上で 応用メディアに関して試験的実装を行う. 応用メディアの実装としては,熱の投影手法の再設計を中心に,センサの選定と入出力のループの設計に注力する.
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Causes of Carryover |
研究者の異動に伴う研究環境の変化があり、初年度の研究はプロトタイプ試作に注力した。実験及び環境が整った2年次以降に、試料や計測機器をまとめて購入し、実験に取り組む。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
定量的な評価を実施するためにカラーセンサを購入する。また、実験を効率的に実施するために、実験補助者を雇用し、研究を推進する。
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