2017 Fiscal Year Research-status Report
疎表現とノンパラメトリックモデルの融合によるデータ駆動型推論に関する研究
Project/Area Number |
16K16108
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
日野 英逸 筑波大学, システム情報系, 准教授 (10580079)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 機械学習 / スパースモデリング / 応用統計 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度は,ノンパラメトリックな潜在構造の推定方法として,潜在的次元推定手法を開発した.従来の低次モーメントを用いた近似的なフラクタル次元の推定と比較して,高次のモーメントの情報を取り込んだ推定手法を開発した.高次モーメントを含めて潜在的次元推定の方法は自明ではなく,一般化線形モデルと多項式回帰,サンプリングといった手法を駆使して,高精度な推定方法を実現した.実現した手法の論文化に加えて,オープンソースソフトウェアとして提案手法と関連手法を統一的に実行できるプログラムを公開した.潜在次元の推定手法は様々な分野で必要とされる技術であり,本研究の遂行を通して得られた知見をもとに,生物データや宇宙科学データ分析における重要な前処理としての展開も実施している.
当初の研究計画通り,スパースモデリングに基づくスロースリップ地震の分析を実施した.豊後水道付近のプレート境界におけるスロースリップ推定に取り組み,これまでの手法では検出できなかった,地殻構造を良く反映した滑りパターンの同定に成功した.本研究はScientific Reports誌に掲載され,共同研究機関と共同でプレスリリースも行った.
その他,地球科学の様々な問題に,本研究課題のテーマであるスパースモデリング,ノンパラメトリックモデリングに基づく手法を適用し,火山灰の客観的分類,マグマテクトニクス場の特徴づけ等,これまで地球科学の諸分野で勘と経験に基づき行われてきた分析を統計的な客観性を持った方法で実現することに成功している.さらに,材料科学分野の研究者との共同研究も行い,ノンパラメトリックモデリングによる材料計測時間の大幅な短縮を始めとして重要な成果をあげることが出来た.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題はデータの形状や生成プロセスに強い仮定をおかない柔軟なデータ解析と,データに含まれる本質的な情報を抽出する手法の開発,及びその実データへの応用である.一般に柔軟なデータ解析と情報抽出は両立が難しく,また,計算量,記憶容量といった実用上の困難も解決する必要がある. 現在までに,当初の予定通り,データの分布に特定の形状を仮定すること無く,データが有する潜在的な次元を推定する手法を開発した.また,データのノンパラメトリックなモデル化に伴うモデルの複雑性の評価と制御方法の一つとして,粒子フィルタに適した情報量規準の開発に取り組み,実験的に良好な性能が得られることを確認している.最終年度の課題である疎性とノンパラメトリック手法の融合の枠組みの構築に向けて,理論的な枠組みは整いつつある. また,実データの解析にも意欲的に取り組み,本研究課題に沿って多くの共同研究を実施した.
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Strategy for Future Research Activity |
H29年度までに推進した,疎性とノンパラメトリック手法の融合の枠組みを土台として,柔軟かつ解釈可能性の高いモデリング・データ解析手法の開発と応用を行う. 目的とする手法開発のベースとなる技術は,MCMCやブートストラップ法といった,サンプリング法であると考えている.サンプリングに基づくパラメタ分布の推定の方法論と,スパースモデリングの方法論を融合し,統計的外れ値検知,解釈可能性の高いスパース回帰など,確固たる理論背景を有した具体的かつ実用性の高いアルゴリズムの開発を行う予定である. 実応用としては,継続してスロースリップ地震の解析を行う.これまでより広い範囲の(具体的には東北沖地震を想定している)プレート境界における滑り推定のためには,H29までの研究で利用した解析モデルのみでは計算量的観点から困難が生じる.モデルのハイパーパラメータの推定を効率的に行う手法を採用するなど,よりスケーラブルなスパースモデリング手法を駆使して重要な実問題に取り組む. また,地球科学に加え材料科学,生命科学に関連するデータ解析も行い,開発したモデル・解析手法の有用性を様々な観点から検証し,諸科学の土台としての寄与を目指す.
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Research Products
(21 results)