2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K16136
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
福嶋 政期 東京大学, 大学院情報理工学系研究科, 特任研究員 (30761861)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 情動 / ブレーンストーミング / 語彙学習 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,近年明らかになりつつある情動の多彩な機能を引き出すことで,実社会の課題解決に繋げることを目標とし,次の二つに取り組む.第一に,人が協調する場面において情動が抑圧されてしまい,議論が活発化しない・打ち解けられない要因の解消に取り組み,活発で打ち解けた協調学習・協調作業環境を目指す(研究項目1).第二に,情動の記憶定着機能を語彙学習に応用することに取り組み,語彙の暗記作業を何度も繰り返すことで新たな単語を暗記させるユーザへの負荷の高い慣習の解消を目指す(研究項目2).いずれも,情報技術の構築と実験を通した有効性の検証までを目標とする. 研究項目1は,情動を抑制する要因を「対面コミュニケーション」と「情報技術」の二つに分け,取り組む.第一年度であるH28年度は,前者の対面コミュニケーションの要因について取り組んだ.具体的には,簡易に褒められるオンライン上の仕組みであるfacebook の「like」ボタンを対面協調作業に応用した.実装は,スマートフォンに接続するだけで機能するボタンシステムである.スマートフォンには多種の肯定意見を表す効果音が内蔵されており,簡易なボタン押下のみで,他者を大きなリアクションで褒めることができ,他者の承認欲求を満たすことが可能である.本システムを使うことで,ブレスト参加者にポジティブな感情が喚起され,ブレストのアイデア数が有意に向上することが確認された. 研究項目2は,語彙学習に情動刺激を加えるにあたり,聴覚刺激によって情動を喚起させることにした.これは,単語を学習する場合,視覚と聴覚情報を利用する形態が一般的であるためである.情動刺激の中でも特に,覚醒性の刺激が,記憶の保持を促すことが明らかにされている.そこで,国際情動デジタル音声の中から覚醒度の高い音を選定し,単語学習時にこの音を再生する場合としない場合の記憶保持率の変化を比較した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画通りに進んでいるが,研究項目2については,まだ統計的に有意な結果ではないので,引き続き検討が必要である.
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Strategy for Future Research Activity |
研究項目1は,情動を抑制してしまう「情報技術」自体の課題取り組む.具体的には対面協調作業の場においてPCを利用することによる弊害に着目する.我々が開講してきたグループワーク講義においても,PC を利用すると教室全体の会話量が減り,議論の活発度や満足度が減少することが観察されている.そのため,メンバー間に垂直な画面を配置することは避け,紙や付箋紙などの協同注視が可能なツールに,デジタルな機能を加える事を検討する. 研究項目2は,本成果を基盤とした発展として,情動刺激や運動刺激の記憶保持効果を基盤とした語彙学習の潮流を作る別のプロジェクトを立ち上げた.情動刺激の語彙学習への適用可能性についての統計的な検討もこちらのプロジェクトで実施することにする.そのため,今後は研究項目1について重点的に取り組む.
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Causes of Carryover |
学会投稿や論文投稿までに時間を要してしまい,旅費にて支払う予定だった金額を次年度に繰り越すことになったため.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
論文投稿費および学会投稿費を次年度に繰り越した上で,再度,予算執行計画を算出する.
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