2017 Fiscal Year Research-status Report
震災時の心理に基づく避難誘導ではない避難方法についての研究
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16K16159
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
山邉 茂之 東北大学, 未来科学技術共同研究センター, 准教授 (90533670)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 災害対応 / ドライビングシミュレータ / 避難 / 心理 |
Outline of Annual Research Achievements |
避難を誘導する情報提示方法の検討ではなく,避難誘導を行わずに避難してもらえる情報提示方法の検討を目的として,今年度は,提示するドライバの情報依存性について実験から明らかにした. 提示する内容は,東日本大震災にて車で避難した実際の方法であるが,交通規則に反する走行でもある.平時であれば誰もその情報には従わない.しかしながら,東日本大震災では,この方法で避難したドライバは助かり,渋滞に留まったままのドライバは被害を受けた経緯がある.ドライビングシミュレータにて走行中に地震を発生させ,地震が治まり津波の危険性がある中でしばらく走行した後,渋滞が発生しているシチュエーションにて情報を下記3種の方法で提示した. 【情報なし】:全員渋滞の一部となる. 【他車の数台が避難行動】:自車には何も情報がなく,他車が避難行動を始め,それを見たドライバが交通規則を破る判断を行い,他車をまねて避難行動を起こしたのは全体の2割. 【自車に直接避難方法提示】:自車に交通規則に反してしまう避難方法が提示された場合,情報に従ったのは全体の8割. 「情報なし」が東日本大震災で多くの個所で生じた渋滞と同じ状況である.「他車の数台が避難行動」では,一部のドライバが津波から避難するために交通規則に反した走行を行ってもまねなかったのは,沿岸部で確認された渋滞状況と酷似する.では,「自車に直接避難方法提示」で伝えるとドライバは交通規則を破っているにも関わらず行動を起こしたことは,提供された情報が仮に間違っていてもそれに従う可能性が高く,災害時の混乱中にどれだけ正確な情報提供ができるか極めて難しい問題となり,避難の誘導の危険性が実験から確認できた. 次年度は,ドライバが提供された情報に従うのではなく,ドライバ自らの判断で行動を起こせるための情報提示の検討を行う.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実施計画の通り,実験シナリオ構築と実験,データからドライバ行動を計測することができた.ただし,予定していたドライバの心理に基づく避難方法の提案にはもう少し検討する余地があり,特に今年度確認されたドライバの情報依存に関しては,実験という環境の加味も否定はできないが高い依存が確認され,依存を回避して判断が行える情報提示のあり方を検討していく必要が出てきた.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の実験結果は,より精査し情報提示方法のもうひと工夫を検討して,再度,次年度で追加の実験を行う予定である.提示部分はドライバが選択の意思決定の現れとしてタッチパネル操作にするかなど検討を行い,計測するためのドライビングシミュレータのシナリオならびに計測項目は本年度と同様のため,早い時期での実験を実施する計画である.
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Causes of Carryover |
実験での被験者の数を限定し,追加で実験が行える謝金を残したため
次年度に実験のための謝金に充てる
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