2016 Fiscal Year Research-status Report
現場事例と規範知識を組み合わせた業務プロセス知識の獲得に関する研究
Project/Area Number |
16K16160
|
Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
西村 悟史 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 人工知能研究センター, 研究員 (30760649)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 知識発現 / オントロジー工学 / 知識マネジメント |
Outline of Annual Research Achievements |
(1-a) 教科書レベル知識の構造的記述:介護現場で用いられる教科書をベースとし,11種類の介護業務について構造的記述を行った.記述結果は,関係構築済みの介護現場の従業員から十分性が確認された.それに加えて,現場の従業員が中心的役割を担う知識記述の方法として知識発現を確立した.知識発現は,教科書レベル知識(以降,共通知識に統一)を従業員に提示することで,経験とともに蓄積されている現場レベル知識(以降,固有知識に統一)を表出し,構造的に記述する方法論である.共通知識とは同種の現場(例えば,介護現場)で共通に知られている知識を指し,固有知識とは各施設で特有に蓄積されている知識を指す.まず,共通知識をもとに従業員同士での議論を通じた固有知識の記述が可能であるかを,褥瘡(床ずれ)予防業務を題材に確認した.次に,従業員による固有知識の構造的記述が可能であるかを,食事介助業務を題材に確認した.結果として,どちらも現場の従業員が中心的役割を担って実現できることを確認した.すなわち,現場の状況に適応的に変化する非定型業務をマニュアルとして構築する方法論を確立したと言える.さらに,異なる介護法人において,法人標準知識と呼べる業務知識の整備に対して本研究成果を適用した.
(1-b) 業務記録の分析と状況の整理:まず,研究協力関係を構築した介護施設における業務記録の分析を(1-a)と並行して行った.しかし,知識の構造的記述がなされていない状態では,どの記録が有用であるのかの判断に専門知識と時間を要することが分かった.そこで,今年度は,主に現場の従業員へのヒアリングと前述の知識発現を通して,知識の構造的記述を行った.結果として,構造的記述に埋め込まれる形で,業務知識の適用される状況が整理された.すなわち,(1-a)で構築した知識に対して業務記録を関連付けて蓄積し,分析することの可能性が示唆された.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1-a)については,介護分野に対象を絞って,11種類の介護業務について共通知識の構造的記述を行った.これは,研究協力先が定める初級者クラスの介護士が行う介護業務の内,直接介護と呼ばれる範囲をカバーしている.それに加えて,これは平成29年度の実施内容にも含まれることではあるが,現場の従業員の持つ固有知識を表出し,構造的に記述する方法論として知識発現を確立した.これは,知識マネジメント分野に対する新しい貢献と言える.
(1-b)については,(1-a)で記述した共通知識に埋め込まれる形で状況の整理を行った.当初予定していた介護施設における業務記録の分析は十分には進められていない.一方で,従業員へのヒアリングと知識発現を通して従業員の持つ固有知識を共通知識に関連付ける形で,それらの業務がどのような状況で行われるのかが整理された.
総体として,平成28年度に実施予定であった(1) 業務プロセスの実施される“状況”の整理はおおむね順調に進展していると言える.
|
Strategy for Future Research Activity |
(2) 現場適応型マニュアルの実装と評価:平成28年度の成果をもとに,知識発現をより精緻な方法論として確立する.最終的には,従業員がそれぞれの持つ知識を用いて業務を行うような現場(例えば,介護現場等)において,業務プロセスに埋め込むことも含めた方法論を目指す.具体的には,研究協力先である介護現場と共同で,どのような属性を持つ従業員が何人程度参加することが望ましいか,共通知識として用意するべき知識の質と量はどの程度か等を精緻化する.同時に,その応用に関しても検討を進める.介護現場での応用の一つの形として,法人の理念を表現するような固有知識を構造的に記述することで,新人教育への応用を考える.知識発現を通して,経験を積んだ介護士と新人介護士が知識を移転し,得られた固有知識の構造的記述をマニュアルとして利用することで,法人全体での知識共有の実現が期待できる.このような想定される応用範囲を整理し,そのために必要な知識発現方法論として精緻化する.
|
Causes of Carryover |
当初想定していた研究協力先の介護施設よりも近郊の施設を中心に研究協力,活動を行ったため,旅費の使用額が減じた.
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究協力先への旅費,追加の成果発表(論文掲載料,旅費,参加費等)等に使用を予定する.
|
Research Products
(6 results)
-
-
[Presentation] 知識発現を指向した複数観点からの知識モデルの検討2016
Author(s)
西村悟史, 大谷博, 畠山直人, 長谷部希恵子, 福田賢一郎, 來村徳信, 溝口理一郎, 西村拓一
Organizer
GN Workshop 2016
Place of Presentation
草津温泉 ホテル&スパリゾート 中沢ヴィレッジ, 群馬県, 日本
Year and Date
2016-11-18 – 2016-11-19
-
[Presentation] Methodology for “knowledge explication” of various elderly care processes from each care facility2016
Author(s)
Satoshi Nishimura, Hiroshi Ohtani, Naoto Hatakeyama, Kieko Hasebe, Ken Fukuda, Yoshinobu Kitamura, Riichiro Mizoguchi, Takuichi Nishimura
Organizer
HAT-MASH 2016, JSAI-International Symposia on AI
Place of Presentation
Keio University, Kanagawa, Japan
Year and Date
2016-11-14 – 2016-11-15
-
-
-
[Book] トコトンやさしい人工知能の本(第4章人工知能はどう応用されているか?43業務知識を学び従業員を支援する)2016
Author(s)
辻井潤一, 一杉裕志, 尾原和啓, 鶴岡慶雅, 中田亨, 中田秀基, 西村悟史, 西村拓一, 橋本学, 松原崇充, 渡辺健太郎
Total Pages
159
Publisher
日刊工業新聞社