2016 Fiscal Year Research-status Report
公共図書館経営におけるハイブリディゼーションの基礎的研究
Project/Area Number |
16K16161
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
小泉 公乃 筑波大学, 図書館情報メディア系, 助教 (70567461)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 図書館経営 / 図書館長 / ハイブリディゼーション / 事例分析 / エスノグラフィー / 国際比較分析 / 経営組織 / スウェーデン |
Outline of Annual Research Achievements |
研究初年度は,スウェーデンと日本における公共図書館を対象にインタビュー調査と観察調査をおこなった。また,アイルランドにおいて予備調査も実施した。日本における調査対象は,(1)高知県立・市民図書館,(2)新宿区立図書館,(3)田原市図書館である。スウェーデンにおける調査対象はストックホルム公共図書館である。 高知県立・市民図書館は県立図書館と市立図書館の合築を進めており,これは公的組織間におけるハイブリディゼーションの事例として位置付けられる。平成28年度において同図書館は,主にサービス計画を立案しており,県立・市立図書館の役割とサービス構築の具体的なスケジュールが少しずつ明らかになっていった。 新宿区立図書館は,分館を対象に指定管理者制度を活用しており,公的組織と私企業のハイブリディゼーションの事例である。 同図書館を対象にエスノグラフィー(インタビュー調査と観察調査の組み合わせ)を実施し,経営組織のメカニズムの一部を明らかにした上で,国際学会において研究発表を行った。 田原市図書館は直営経営の事例である。同図書館を対象にエスノグラフィーを実施し,経営組織のメカニズムの一部を明らかにした上で,国内学会において研究発表を行った。 スウェーデンでは,ストックホルム公共図書館の館長とマネジャーにインタビューを実施した。スウェーデンは北欧の中でも特に直営経営を重視しており,同館を分析することで北欧の公共図書館における直営経営のモデルを詳細に描けることが明らかになった。さらに,ストックホルム公共図書館の館長は,スウェーデン国内において民間企業によって運営されている複合施設の図書館でのマネジャーの経験もあり,直営経営と非直営経営の比較分析において大変有意義なデータを得ることにも成功した。アイルランドの予備調査ではダブリン公共図書館に訪問をし,日本と状況が類似していることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日本については,研究計画で予定していた調査対象のうち主要な(1)高知県立・市民図書館,(2)新宿区立図書館,(3)田原市図書館に調査の許諾を得て,本研究計画の初年度からエスノグラフィーを実施できている。また北欧についても,スウェーデンのストックホルム公共図書館の館長とマネジャーにインタビューを実施することに成功した。 また,国際学会(iConference2017)に出席し,ノルウェーとデンマークの大学における共同研究者と次年度以降の研究についての具体的な打ち合わせも実施することができた。 以上のことから,調査対象については多少の絞り込みを行なっているが,全体の目的に対してはおおむね順調に進んでいると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は,「平成28年度 第8回 国際共同研究加速基金(課題番号:16KK0072)」に採択されたために,平成30年度は在外研究として,北欧の公共図書館を中心により詳細な調査を実施する予定である。したがって本年度(平成29年度)は,日本において現在調査を継続している(1)高知県立・市民図書館,(2)新宿区立図書館,(3)田原市図書館を主な対象とし,より詳しくエスノグラフィー(インタビュー調査と観察調査の組み合わせ)を実施することで,日本の公共図書館における直営経営とハイブリディゼーションについての研究成果をまとめていく予定である。
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