2017 Fiscal Year Research-status Report
公共図書館経営におけるハイブリディゼーションの基礎的研究
Project/Area Number |
16K16161
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
小泉 公乃 筑波大学, 図書館情報メディア系, 助教 (70567461)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | ハイブリディゼーション / 公共図書館 / 図書館経営 / 経営組織 / 質的研究 / 事例分析 / エスノグラフィー / 理論構築 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,主として日本における公共図書館を対象に調査をおこなった。調査対象は,(1)高知県立・市民図書館(オーテピア高知図書館),(2)田原市図書館,(3)海老名市立中央図書館,(4)武雄市図書館・歴史資料館であり,調査手法はエスノグラフィー(観察調査とインタビュー調査の組み合わせ)を採用した。 オーテピア高知図書館には,研究初年度に引き続き複数回訪問したうえで調査を実施した。この事例は公的組織間におけるハイブリディゼーションとして位置付けられる。2017年度において同図書館は,開館に向けたサービス計画の執行と組織・人員計画の策定が主におこなわれた。また入居先の新図書館等複合施設「オーテピア」が完成したことに伴って,高知県立図書館が2017年12月末に閉館し,オーテピアへの引っ越し作業があった。さらに年度末には,策定してきた組織・人員計画が実行に移された。 田原市図書館にも,研究初年度に引き続き複数回訪問したうえで調査を実施し,図書館長のマネジメントの特徴を記述していった。同館は直営経営の事例である。同館において司書資格を保有する新しい副館長を採用しており,将来に向けた意思決定が確実になされていることの一端を伺うことができた。 海老名市立中央図書館と武雄市図書館・歴史資料は私企業のカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)による経営の事例である。同企業は民間企業の中でも長期間にわたり成功し続けており,そのノウハウを公共図書館の領域にも適用してきている。本年度は,CCCが経営する海老名市立中央図書館と武雄市図書館・歴史資料に対して調査を実施し,公的部門において私企業が経営する図書館の実態を明らかにしていった。 なお昨年度調査を実施した新宿区立図書館については,担当者が異動し多忙になったことから調査を一時的に停止している。また調査結果の一部を国際学会でも発表した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
第8回(2016年度)国際共同研究加速基金(課題番号:16KK0072)に採択され,2018年2月末から1年間のオスロ(ノルウェー)を拠点として調査をおこなうために,2017年度は日本の公共図書館を中心に調査を実施してきた。 昨年度からエスノグラフィーをおこなってきている主要な調査対象の高知県立・市民図書館(オーテピア高知図書館)と田原市図書館にも継続的に調査を行うことができた。また2017年度からは,私企業による経営がなされている海老名市立中央図書館と武雄市図書館・歴史資料に調査の許諾を得て,エスノグラフィーを実施できている。 また,昨年度から調査をおこなってきたスウェーデン,ノルウェー,デンマークの公共図書館との来年度以降の調査に関する調整と共同研究先のOslo Metropolitan University(以前の名称は,Oslo and Akershus University College of Applied Sciences :HiOA)の研究者らとも打ち合わせを実施し,計画通り2018年2月末からオスロのOslo Metropolitan Universityに拠点を移し研究環境を整えることに成功した。 さらに,The Nordic Educational Research Association(NERA) 2018 - 46th CongressとiConference 2018の二つの国際学会においてこれまでの研究成果の一部も発表した。 以上のことから,一部の図書館については一時的に調査を停止はしているものの,全体の目的に対してはおおむね順調に進んでいると考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
2018年度は在外研究として北欧の公共図書館を中心により詳細な調査を実施する。具体的には,すでに初年度に訪問調査をしたストックホルム公共図書館(スウェーデン),オスロ公共図書館(ノルウェー),コペンハーゲン公共図書館(デンマーク)についてより詳しくエスノグラフィーを実施することで,北欧諸国の公共図書館における直営経営とハイブリディゼーションについての研究成果をまとめていく。 また,同時に日本についても,オーテピア高知図書館が7月に開館することが予定されていることとなどから,調査を継続したしたうえで,研究成果を統合的に記述していく予定である。
|
Research Products
(4 results)