2017 Fiscal Year Research-status Report
オンラインメディアを活用した人間行動研究を行う企業と研究者の社会責任に関する研究
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16K16169
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
浅井 亮子 明治大学, 公私立大学の部局等, 研究員 (40461743)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 情報倫理 / 個人情報 / センシティブデータ / 社会的責任 / ソーシャルメディア |
Outline of Annual Research Achievements |
当該研究課題の目的であるオンラインメディアやソーシャルネットワークを利用した研究におけるデータや研究成果の倫理的な利用等について、企業、研究者やユーザの視点から研究に取り組んできた。現在、組織が収集したデータをいかに利用するのか、また不祥事が起きた際に誰がどのように責任を取り対応をするのかという点において再考が求められている。こうしたことを背景として初年度に続き人々に関する膨大なデータを収集した企業や公的機関(研究機関を含む)がそのデータ利用に関してどのように倫理的な指針を設けているのか、そして組織によるデータ利用の実態について研究を進めた。 具体的にはスウェーデン政府による国民の個人情報漏洩の問題を取り上げ、公的機関とIT企業との個人情報管理のあり方とその社会的責任について考察した。さらに同国民の個人情報漏洩に対する反応についてもインタビュー調査も行った。この研究成果を日本情報経営学会第75回全国大会において(題「ソーシャル・ディタッチメント」)発表した。さらにスウェーデンの公的機関による個人情報とセンシティブデータの取り扱いに関し同国民がどのように考えているのかについての調査研究も進め、その研究成果は"Snowden’s revelations and the attitudes of students at Swedish universities"と題し国際ジェーナルに掲載された。 また情報科学研究に携わる若手研究者へのインタビュー調査を行い、所属するプロジェクトや研究助成を受けている組織との関係の中で抱える倫理的な課題についての研究も進めた。この研究成果は、国際会議において"Balancing between the conflicting interests of different stakeholders in research"と題して研究成果を報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該研究課題の初年度の研究活動に基づき、引き続き先行研究の文献収集や文献整理、またその内容の精査を行いながら、大学や政府機関などの研究組織でデータサイエンスやコンピュータサイエンスに携わる研究者(とりわけ若手研究者)に対してインタビュー調査やアンケート調査、そしてディスカッションを行うとともに研究内容に即した分析のための理論や枠組みの選定と構築を進めてきた。とりわけ公的機関や企業による個人情報やセンシティブデータの管理について人々がどのように捉えているのかの国際比較をするため、インターネットを活用したアンケート調査を行ない、統計分析ソフトウェアを用いた統計データの分析を行い、また考察にはこれまで準備してきた理論的枠組みを用いた。初年度ならびに二年目とほぼ研究計画に沿った内容で研究を進めていると考えている。 当初データ収集を専門業者を介して行うことを検討していたが費用の折り合いがなかなかつかず、最終的にオンラインサーベイのプラットホームを無料で提供するオンラインサイトを用いることでアンケート調査を進めることとなったが、費用を抑えながらも多くの回答を回収できたことで、フォローアップするためのアンケート調査やインタビュー調査が実施できる可能性が出てきたため次年度以降はこうしたことも念頭におき研究活動を展開していく所存である。 当該研究課題2年目の一つの達成目標である国際ジャーナルへの論文の掲載が叶い、また国際会議および国内学術会議においても成果報告ができたことで概ね研究計画に沿った研究活動を進めているとともに、研究成果の創出ができていると考えている。一方で国際ジャーナルへの掲載までは時間がかかることがあり、すでに投稿済みであるものの未だに査読過程にあり成果として公的な形で報告できていないものもある。こうした投稿済みのものに関しては次年度以降に成果として報告できるものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
当該研究課題の最終年度を迎えるにあたり、これまでの初年度二年次と継続して取り組んできたインタビュー調査あるいはアンケート調査の結果を活用しながら、情報技術を活用したデータ収集とデータ利用を行う公的機関(研究機関を含む)や企業がデータ活用において抱える倫理的な課題について理論的にアプローチし、そこでの倫理的葛藤を和らげるあるいは解消するためのツールや指針あるいは方策などを提言する研究成果が出せるように活動を進めていく所存である。 また本年度は研究成果報告のため投稿あるいは研究成果報告を申し込んだ国際会議発表やワークショップ、あるいは国際ジャーナルや書籍の出版など最終年度を控え研究成果報告を公表する準備を進めてきた。次年度以降、こうした準備が研究成果報告の公表と結びつくように、引き続き着実に研究活動を進めていくものである。現時点(2018年5月)では、6月の国内学術会議での報告、7月国際会議での報告、8月国際会議と国際ワークショップ、9月国際会議2件を控え、2018年度中の書籍の出版を予定している。これらに加えて国際ジャーナルへの研究論文の掲載ができるように、引き続き研究論文の作成と投稿を進めていく。 あわせて、当該研究課題が最終年度を迎えたのちにさらにそこでの研究成果にもとづき次の研究課題へと研究活動を進め、当該研究課題から得た研究成果が活かせるように、現在の研究活動をより発展させそこから導かれるさらなる疑問や研究課題といったものについても配慮しながら研究活動を推進していきたいと考えている。 当該研究課題の研究活動を通じて、日本国内および海外の研究者たちと共同研究や国際比較研究をする機会を得ることができ、こうした研究ネットワークをもとに現在も共同研究を進めている。こうした国内外の研究者との共同研究も活発に進めて、充実した研究成果が出せるように研究活動を進捗していく所存である。
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Causes of Carryover |
当初オンラインサーベイの専門機関に依頼を検討していたアンケート調査実施に予算を計上していたが、見積額が想定以上の金額となったため基本的に無料で使用が可能なオンラインサーベイのプラットホームを利用しアンケート調査を実施した。またインタビューの際にインタビュー対象者に対して支払う予定の謝礼についても教育研究機関で働く研究者を中心に行ったことから謝礼が発生せずに調査を進めることができた。こうしたことからアンケートおよびインタビュー調査に予定していた費用を次年度の調査活動にて活用することを検討している。さらにアンケート調査後のデータ分析のアシスタントの雇用を予定していたが、今年度は当該研究課題以外で従事していた研究活動が終了しこれまで以上に当該研究活動に集中し研究することができるようになったことからデータ分析作業に自らあたり、また共同研究を進める機関よりデータ分析ソフトを使用させてもらえたことからソフトウェア購入費用も抑えることとなった。そのためアシスタント費用およびソフトウェア購入費用も今年度は圧縮されている。次年度は当該研究課題最終年度であることから、研究総括のためこれらの予算をフォローアップ調査およびより多くの研究成果公表に使用することを計画している。あわせて当該研究分野では技術開発が急速に進むため必要となる文献資料も多く、研究内容を裏付けるための研究資料収集にも使用する所存である。
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Research Products
(5 results)