2018 Fiscal Year Research-status Report
オンラインメディアを活用した人間行動研究を行う企業と研究者の社会責任に関する研究
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16K16169
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
浅井 亮子 明治大学, 研究・知財戦略機構, 研究推進員 (40461743)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 情報倫理 / 人工知能技術 / オンラインテクノロジー / ソーシャルロボット / 社会的責任 / ジェンダー / アイデンティティ / 社会的リスク |
Outline of Annual Research Achievements |
当該研究課題が目的とするオンラインメディアやソーシャルネットワークを利用した研究開発に関わる企業および研究者の社会責任を情報倫理の視点から考察するため、より複雑にまた可視的・不可視的に人々の生活に浸透している情報技術に関わる活動の現状と懸念される将来的な社会的リスクについて倫理的視点、アイデンティティの視点、またジェンダーの視点から検討を加えてきた。現在ではオンラインメディアをさまざまに活用し、人々の社会活動にとどまらず私的領域ともいえる家庭での活動などこれまで以上に幅広い分野においてオンラインを介した公的および私的サービスが企業により提供されていることから、当該年度は家庭領域に浸透しつつあるソーシャルロボットと人工知能技術に焦点を当て、ユーザの家庭生活および社会生活また倫理意識にどのような影響を与えているのかについて研究を進めてきた。 とりわけ人工知能技術を搭載したソーシャルロボットがテクノロジー企業によって家庭に送り込まれることにより、成人のユーザだけでなくユーザとなる子どもたちに与える影響について海外の研究者とも共同研究を行い、国際会議で発表を行った。現在こうした研究に携わる研究者が増えており、活発なディスカッションを行うとともに、新たな共同研究に向けた話し合いを持つことができた。 具体的な成果としては、子どもたちの倫理意識や心理にソーシャルロボットや人工知能技術が与える影響ならびに将来的に懸念される社会的リスクについて情報倫理の視点から検討を加えた国際会議発表とその予稿論文"Social Robot and Childcare"、また人工知能技術が広く浸透した社会では女性の社会的地位の改善やジェンダー平等の実現が果たして可能となるのかについて考察を行った国内学会での発表とその予稿原稿「テクノロジーとジェンダー:倫理的視点から考えるAI時代の女性労働」が挙げられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該研究課題申請時の研究計画にしたがい、初年度は基礎的な研究として先行研究の精査と整理、さらに現在、オンラインを活用してビジネスを展開している企業だけでなく、こうした企業からの支援を受けた研究に従事する研究者たち、および企業とは独立して研究活動を展開する研究者たちが置かれている状況や倫理的意識についての研究を進めてきた。当該研究課題二年目には初年度での研究活動および研究成果にもとづきより具体的に現在社会的に見受けらる情報技術あるいはオンラインテクノロジーに関わる問題を取り上げ検討を加えた。研究者たちの研究活動や研究成果によってもたらされる社会的利益、あるいは企業が享受する利益、またユーザにとっては利便性や効率性の向上がある一方で、それぞれが引き受けなければならない社会的リスクがあることを研究の中で解明することも研究目的の一つとして積極的に取り組んできた。 当該研究年度は、とりわけ人工知能技術の急速な進展が公的私的領域を問わずに見られることから、人工知能技術を搭載したソーシャルロボットとそれを提供する情報通信企業とユーザとなる子どもについて焦点を当て、倫理的視点だけでなく心理学視点も取り入れ研究を展開した。その結果は国際会議での発表(2件)した。また、人工知能技術と意思決定に焦点を当てた研究も合わせて行い、国際会議にて発表し、予稿原稿は書籍として出版されている。また国内での研究成果としては、人工知能技術が果たしてジェンダー平等を実現し、女性の社会的活躍を促進するのかについて、情報倫理の視点から考察した研究成果を国内学会において発表し、その予稿論文が発行されている。研究計画にしたがいながら、より研究課題の中で取り上げる具体的な事例を精査しながら、研究成果の発表を行うことができ、おおむね順調に研究活動は進捗したと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
当該研究課題における研究成果にもとづき、新たな研究協力者や研究プロジェクトへと参加する機会を得ることができた。そこでその成果をより充実発展させ、発表することを次年度の研究活動における目的と位置付け、積極的な成果発表を行うことを予定している。研究の推進方法としては、これまでの研究活動と同様に個人での研究活動の他に、研究協力者や研究者のネットワークを活用して、より多くの論文や国際会議発表を行う。具体的には、日本国内と国外での人工知能技術が社会的にどのように受け入れられいるのかを、質問調査票を用いた量的調査を行いその結果をSPSSにより分析し発表する予定である。またそれとともに、量的調査のフォローアップとしてインタビューによる質的調査も行いより信頼性の高い研究内容と成果にすることを試みる。 具体的に見込まれる成果に関しては、書籍のチャプター論文を作成し書籍として出版されることを目指すとともに、国内外の学術雑誌への掲載を目指して論文を作成する。また日本国内での学会発表および国際会議での発表もこれまでと同様のペースで行うことを目指している。
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Causes of Carryover |
当該研究年度後半になってから出産および育児のために研究活動を積極的に行うことが難しい時期があり、助成金を使用した研究活動を一時控えていたために計画した予算使用額と実際の使用額に差が生じた。 次年度はそこで生じた差額の助成金をもとに、研究協力者との打ち合わせを行い、また論文作成のための資料購入合わせて質問調査票の依頼、回収と回収したデータの解析で必要となる費用を捻出する計画である。
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Research Products
(7 results)