2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K16170
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
藤原 整 早稲田大学, 社会科学総合学術院, 助手 (60755750)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ブータン / 情報社会 / エスノグラフィ / 地域研究 / 社会情報学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ブータン王国を対象地域として、長期のフィールドワークを通じたエスノグラフィを著すことによって、ブータン独自の情報社会像を描き出すことを目的としている。同国では、1999年にはじめてテレビ放送とインターネット通信を解禁して以後、情報通信技術(ICT)が生活に浸透するにつれて、社会情報環境が著しく変化し、それに伴って、国民の生活にも大きな変化が生じてきている。 本研究は、ブータンのように、農耕牧畜社会から工業化を経ずに情報社会へと至った、世界的にも特異なケースを取り扱うことに大きな意義があると考えられる。特に、途上国と呼ばれる国・地域においては、ICTと言えば、それを用いた経済開発分野に目が向けられ、それが実態としてどのような社会生活の変化を生じさせているか、といったような、地域住民に密着した調査は十分に行われてこなかった。 研究初年度となる平成28年度は、ブータンにおける調査体制の構築を目指した。調査のための現地受入研究機関としては、当地の最高教育機関であるブータン王立大学(Royal University of Bhutan)を選定し、そのうち、社会科学系の学部を擁するシェラブツェ・カレッジ(Sherubtse College)、および、工学系の学部を擁するジグメ・ナムゲル・工科カレッジ(Jigme Namgyel Engineering College)とのあいだの連携強化に勤めた。 具体的には、まず、両カレッジの学長に面会し、研究内容と調査についての概要を報告した上で、協力と理解を求めた。その後、連携研究部門の責任者と継続的に連絡を取り合い、研究の進捗状況や次回訪問時の調査計画について情報共有と意見交換を行なっている。また、シェラブツェ・カレッジにおいては、予備調査として、学生113名を対象にアンケート調査を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成28年度中に、二度ブータンを訪問し、調査チームの編成と調査対象地域への下調査を実施する予定であったが、一度だけの訪問に止まり、下調査の実施には至らなかった。その最大の原因は、研究代表者が博士学位論文の執筆、および、その審査に注力したためである。 しかしながら、博士学位論文は、本研究と並行して進められてきた、研究代表者にとって主たる研究業績の一つであり、本研究の下地となる理論的枠組みを共有している。そのため、今後の調査に向けての準備の一つと位置付けることもできる。また、博士号を取得したことで、現地研究者の協力を得られやすくなるという実務的なメリットもあると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度はまず、平成28年度中に実施できなかった下調査を早急に実施する。調査対象地域については、当初、全国20県のなかから、西部、中央、東部、そして、それぞれの南北で各1県、計6県を選定することを検討していたが、残り2年間で全国的な調査を実施することは時間的に困難であると考え、中央ブータン2県を除いた4県に絞るよう軌道修正を図る予定である。県ごとの比較分析は、計画時点から補助的な内容に留めており、あくまでも本研究の中心となるエスノグラフィ記述の有用性を損なうものではないと考えている。 本格的な現地調査は、平成29年度から30年度にかけて、2年間合計で最短4ヶ月から最長6ヶ月を目安に、断続的にブータン国内に滞在し実施する。調査対象地域内のブータン人一般家庭において、日常的なコミュニケーション行動を中心に参与観察を行い、ICTへの接触、メディアの視聴を通した行動と思考を記録した調査ノートを作成する。そして、調査ノートをKJ法を用いたパターン分析を行い、エスノグラフィを記述していく。
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Causes of Carryover |
「現在までの進捗状況」欄に記載した通り、研究に多少の遅延が生じており、その最大の原因は、研究代表者が博士学位論文の執筆、および、その審査に注力したためである。したがって、当初、2度の現地調査を行う予定であったものが1度のみの調査に止まり、結果として、多額の次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額については、主に平成28年度中に行う予定であった現地調査のための海外旅費として充当する。ただし、当初より、平成29年度中に2度の現地調査を行う予定であり、年間3度の渡航はスケジュール、費用の両面で負担が大きいため、渡航時の滞在期間を長くすることで対応する。また、現時点では未定であるが、国際学会、国内学会において各1回以上の研究報告(本研究の中間報告の位置づけ)を行う予定であり、そのための海外旅費、国内旅費として充当する。合計911,656円を旅費として計上する。 その他、図書を含む物品費として80,000円、現地調査時の人件費・謝金として50,000円、印刷費を含むその他費目として40,000円を計上する。
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Research Products
(4 results)