2016 Fiscal Year Research-status Report
前精原細胞における放射線障害の発生機序の解明:インフラマソーム機構との関連性
Project/Area Number |
16K16191
|
Research Institution | Asahikawa Medical College |
Principal Investigator |
渡部 浩之 旭川医科大学, 医学部, 助教 (90608621)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 放射線 / 精子形成 / 細胞死 / 炎症 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの検討により、新生仔期(生後4日目または11日目)の雄マウスにガンマ線・2 Gyを急照射したとき、性成熟後の精巣重量および精子形成能に影響は見られなかったが、胎仔期(妊娠16.5日目)の雄マウスへの照射では、精巣の発育が大きく損なわれ、その個体は不妊となることが明らかとなった。そこで幼若期雄マウスの精巣が放射線に対する耐性を持つようになる時期を特定するために、妊娠15.5日目~19.5日目まで1日毎に実験区を設定し、それぞれガンマ線・2 Gyを急照射した。妊娠15.5、16.5、17.5日目にガンマ線を照射した場合、10週齢での精巣重量はそれぞれ32.6、27.4、37.3 mgであったものが、妊娠18.5、19.5日目には126.9、122.7 mgとなり精巣の発育は大きく回復した(非照射対照の精巣重量:215.7 mg)。また、精子形成が行われている精細管の割合は、妊娠18.5、19.5日目にガンマ線を照射したとき、それぞれ93.3、91.5%であったが、妊娠15.5~17.5日目でのガンマ線照射では2.9~13.8%と極めて低い値となった。 次に精巣の器官培養を用いて、炎症反応が生殖細胞の死滅(精巣の発育)に関与するかを検討した。ガンマ線・2 Gyを照射した妊娠16.5日目の雄マウスから回収した精巣を6週間培養したところ、全ての精巣で生殖細胞が死滅していた。一方で、非照射対照では生殖細胞の死滅は見られなかった。また、バクテリアエンドトキシン(リポ多糖:LPS)を培養液に添加して炎症を誘導すると、41.7%の精巣で生殖細胞の死滅が観察された。これらの結果から、胎仔期の雄マウスへのガンマ線照射後に起きる生殖細胞の死滅には炎症も関与している可能性が示された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
精巣器官培養の培養期間は、生体内での発育状況を踏まえ最長2週間を予定していたが、生殖細胞の生存性を評価するには不十分であったため6週間に変更した。この評価法の確立・培養期間の設定に時間を要したため、実施予定であった遺伝子発現の解析が遅れており、現在実施中である。
|
Strategy for Future Research Activity |
昨年度実施予定であった、器官培養中の精巣における遺伝子発現の解析を行う。 また実施計画に従い、炎症反応が軽減されると考えられるASCノックアウトマウスにガンマ線・2 Gyを急照射し、その後雄性生殖細胞が死滅するかどうかを検討する。得られた結果に応じて、マウス腹腔内への薬剤投与により、ガンマ線照射後の精子形成の回復を試みる。またASCノックアウトマウスの精巣の器官培養を行い、炎症が生殖細胞へ及ぼす影響を体外でも検証する。
|