2017 Fiscal Year Research-status Report
福島県川内村における食材中の放射性物質濃度のデータベース化と住民のリスク認知評価
Project/Area Number |
16K16192
|
Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
折田 真紀子 長崎大学, 原爆後障害医療研究所, 助教 (90737305)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 福島原発事故 / 放射線被ばく / 放射性物質濃度 / リスク認知 |
Outline of Annual Research Achievements |
本申請の目的は、東京電力福島第一原子力発電所事故後、他の自治体に先がけて帰村した福島県双葉郡川内村において、役場、住民と連携して村内で採れた食材に含まれる放射性セシウム濃度を測定して、得られた結果を食品別、季節別、地域別に評価を行うことである。また住民と放射線被ばくと健康に関するリスク認知について経時的に調査を行い、上記の取り組みによって住民のリスク認知が変化したかどうかの評価を行う。 平成29年度は現在の川内村において、帰村者が放射線被ばくと健康影響についてどのような認識を持っているのか、また、年齢、性別、家族構成、帰村時期などによって認識にどのような特徴や違いがあるのか住民のリスク認知の経過について評価した。20歳以上の住民を対象に、質問紙調査にてデータの収集を行い、426名より回答が得られ、完全回答であった354名を解析対象とした。その結果、震災から現在までに受けた線量で、がんなどの健康影響が起こるかという問いに対して「起こる」もしくは「たぶん起こる」と答えた住民の割合は前回の調査と比べて、有意に減少していた。一方で、子どもへの健康影響が起こるかという問いに対して「起こる」「たぶん起こる」と答えた住民の割合に、前回の調査と比べて有意な減少は見られなかった。また1キログラムあたり100ベクレルのきのこを1年間食べたら健康影響が起こるかと思うかという問いに対して「起こる」「たぶん起こる」と答えた住民の割合は、前回の調査と比べて有意な減少は見られなかった。 本研究により住民の放射線被ばくによる健康影響への懸念など前回の調査に比べて有意に減少していた項目がある一方で、1キログラムあたり100ベクレルの食材の摂取による健康影響への懸念は、前回の調査と比べて有意な減少は見られなかったことが明らかになった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
住民への説明会を行った後に、住民の協力の下で食材のサンプリング、住民の放射線被ばくと健康影響に対するリスク認知の変化についてデータサンプリングができている。これらの結果をまとめ、原子力災害からの復興・再生に向けたリスクコミュニケーションモデルの構築を目指していく。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成28、29年度に引き続き、平成30年度は同様に食材のサンプリング、放射性セシウム濃度の測定を通じて得られた結果をデータベース化する。それらの結果に住民が長崎大学・川内村復興推進拠点において情報にアクセスでき、また結果を適宜川内村の広報誌および川内村役場のホームページに掲載する。川内村住民の放射線被ばくと健康影響に対するリスク認知についてどのような変化があったのかについて、村内での説明会を開催して結果を報告し、原子力災害からの復興・再生に向け、住民と行政、科学者が一体となって取り組むリスクコミュニケーションモデルの構築を目指す。
|
Research Products
(1 results)