2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K16204
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Research Institution | Marine Ecology Research Institute |
Principal Investigator |
山本 雄三 公益財団法人海洋生物環境研究所, 海生研実証試験場, 主査研究員 (60532405)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 行動実験 / 電気生理学的手法を用いた実験 / 海洋酸性化 / 嗅覚 |
Outline of Annual Research Achievements |
人為的に増加した大気中の二酸化炭素(CO2)が主要因である地球温暖化は広く一般的に知られているが、さらに近年、大気中に放出されたCO2を海洋が吸収することによって引き起される新たな問題として海水のpHが低下する「海洋酸性化」が指摘され海洋生物への影響が懸念されている。海洋酸性化の影響は、炭酸カルシウム殻の形成に対して最も顕著であり、およそ100年後の海洋酸性化の進行を想定した飼育実験において炭酸カルシウムの骨格や殻を持つ棘皮動物、サンゴ、貝類などの成長に悪影響が現れることが報告されている。魚類の成魚はCO2に対する急性毒性の致死レベルが海洋酸性化で想定されるレベルよりはるかに高いため、成魚には相当程度の耐性があると考えられているが、味覚・嗅覚・聴覚等,感覚器にCO2が与える影響については,ほとんど明らかになっていない。特に魚類の嗅覚は,(1)摂餌行動,(2)繁殖行動,(3)社会行動,そして回遊行動などその役割が多岐にわたる。本研究はこれらの嗅覚に基づく種々の行動に着目し,行動学的手法を用いて海洋酸性化,すなわち低いレベルのCO2曝露が魚類の嗅覚機能に与える影響を明らかにすることを目的とする。 本年度は、電気生理学的手法を用いた嗅覚応答の測定系に用いる実験機材の整備、昨年度、予定数入手することができなかったクマノミの残りを入手した。研究代表者が他業務のため研究所を長期不在とすることが大変多く、計画を予定どおり遂行することが出来なかったため、実施期間の1年間延長を申請し、受理された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本年度は研究代表者のその他の業務(研究所の受託業務)、およびそれに係る現地調査が多忙であった。研究所の受託業務については、当初の予定になかった現地調査の追加により、約2ヶ月以上にわたる出張が加わり、研究所を長期不在とすることが大変多く、本研究課題の供試生物である残りのカクレクマノミの入手や試験準備等を進めてはいるものの、計画を予定通り遂行することが出来なかった。
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Strategy for Future Research Activity |
効率的に研究を進めるために、行動実験を優先して実験を行う。また、実験用水槽を1つ増設し、効率化を図る。電気生理学的手法を用いた実験は、行動実験の結果、影響がみられた魚種とニオイの組み合わせについて、電気生理学的手法を用いたEOG測定実験を行う。滴下する嗅覚刺激の濃度を変化させることにより、嗅覚刺激に対する嗅覚応答の強度の変化を調べる。嗅覚刺激の濃度は10倍ずつ希釈を行い、4段階の濃度で実験を行う。余力があれば、影響のなかったものについても実験を行う。成熟個体の入手の難しいクサフグについては、入手できなければ、実験を割愛する。
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Causes of Carryover |
(理由)研究代表者の他業務による多忙により、計画が遅延している。
(計画)各種ニオイ物質等の実験に用いる試薬の購入、電気生理学的手法に用いる電極等の資材、および実験魚・餌の購入に用いる。また、行動実験水槽を1つ増設する。
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