2016 Fiscal Year Research-status Report
多種金属の一括分離及び類似金属の高効率相互分離を可能とする4相抽出システムの構築
Project/Area Number |
16K16214
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
杉田 剛 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 先端基礎研究センター, 博士研究員 (80772342)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 廃棄物再資源化 / 溶媒抽出 / レアメタル / 金属分離 / イオン液体 |
Outline of Annual Research Achievements |
溶媒抽出法は、水中に存在する金属イオンの抽出分離に有用な技術として広く用いられている。しかし、従来の溶媒抽出法は、互いに混じり合わない2種の溶媒を用いた2相系で行われるため、多種の金属イオンを分離する場合には複数回の抽出操作が必要となり煩雑であった。本研究では、これまで2相間で行われてきた溶媒抽出法による金属イオンの抽出分離を、互いに混じり合わない4種の溶媒(有機溶媒、水、イオン液体、フルオラス溶媒)を用いた4相系に発展させることを最終的な目的としている。4相抽出系を構築することで、多種金属の一括分離や化学的性質の似た金属イオン同士の高効率分離など、従来の溶媒抽出法にはない特性が期待できる。初年度である平成26年度は、4相抽出系において使用できる可能性のある抽出剤を新たに合成し、その抽出特性を有機溶媒/水、または水/イオン液体の2相抽出系において評価した。使用する抽出剤は、これまでの研究において優れた抽出能を有することが明らかとなっているアミド基とカルボキシル基をエーテル鎖で連結したジグリコールアミド酸(DGAA)骨格を基に合成した。DGAAの各官能基を変えて抽出能への影響を評価した結果、カルボキシル基をリン酸基に変換した抽出剤は有機溶媒/水系において様々な金属イオンに対して優れた抽出能を示すことが明らかとなった。また、カルボキシル基をリン酸エステル基に変換した有機リン系中性抽出剤は、有機溶媒/水系ではランタノイド抽出能を示さなかったのに対し、水/イオン液体系では優れたランタノイド抽出能を示した。これより、4相抽出系においてランタノイドをイオン液体相に選択的に抽出できる可能性を見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
DGAAを基本骨格として種々の官能基を変換した新規抽出剤を合成し、有機溶媒/水系において、それぞれの抽出能を比較した。その結果、カルボキシル基をリン酸基に変換するなどの工夫により、抽出能や選択性を制御できることを明らかにした。また、水/イオン液体系において利用可能な抽出剤として、カルボキシル基をリン酸エステル基に変換した新規有機リン系中性抽出剤を合成し、この抽出剤が水/イオン液体系でのみ高いランタノイド抽出能を示すことを見出した。さらに、水/フルオラス溶媒系における金属イオン抽出に使用する抽出剤についても合成中である。以上より、研究計画時に提案した研究項目について、おおよそ計画どおりに研究が遂行できており、ほぼ目標が達成された。次年度はこれまでの研究成果に基づいて、3相抽出系、そして4相抽出系へと進展させる。
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Strategy for Future Research Activity |
パーフルオロ型抽出剤を合成し、水/フルオラス系における金属イオン抽出について検討を行う。その後、有機溶媒/水/イオン液体、有機溶媒/水/フルオラス溶媒、水/イオン液体/フルオラス溶媒の3相抽出系について検討し、その抽出挙動や抽出機構について詳細に検討する。最後に、本研究の目的である4相抽出系の構築を行い、多元素同時分離や難分離性元素の高効率分離を目指す。
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Causes of Carryover |
本研究に不可欠なICP-MSが故障し、急遽科研費を修理費に充てる必要があった。修理費等の額が確定するまで、当初初年度に購入予定であった物品の一部の購入を保留とした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初購入を予定していた物品の購入に充てる。
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