2016 Fiscal Year Research-status Report
イオン交換樹脂を用いたイオン性有機汚染物質の吸着性の評価
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16K16216
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
遠藤 智司 大阪市立大学, 都市研究プラザ, 特任准教授(テニュアトラック) (30748934)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 有機イオン / 有機化学物質汚染 / 吸着等温線 / イオン交換樹脂 / 競合吸着 / 吸着速度 / 土壌吸着 / 疎水性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は様々なイオン性有機汚染物質のイオン交換樹脂への吸着係数を測定し、土壌、底質有機物、粘土鉱物、タンパク質などの環境・生体成分への吸着係数と比較することにより、後者の予測法の確立及び吸着メカニズムの更なる理解を目指すことである。 研究初年度であるH27年度は対象イオン交換樹脂の絞込みを目的として実験を行った。対象樹脂として、骨格構造やイオン交換基の種類の異なる4種類の陰イオン交換樹脂と2種類の陽イオン交換樹脂を選択した。吸着係数の測定はバッチ吸着実験により行った。バイアルにイオン交換樹脂、バッファー、イオン性物質一種を混合し、一定時間後に水中のイオン性物質濃度を測定し、その濃度から吸着係数を求めた。初期モデル物質として、ナフタレンの置換体である陰イオン性有機化学物質2種と陽イオン性有機化学物質2種を用いた。樹種の吸着性を評価するため、それぞれの物質・樹脂の組み合わせについて吸着平衡到達時間、吸着等温線、競合無機イオンによる吸着の抑制を検証した。その結果、以下のことが明らかとなった。 1.実験条件をそろえた場合、吸着係数は芳香族系の樹脂において脂肪族系の樹脂よりも高かった。予想に反し、官能基の種類、組み合わせが吸着係数に与える影響は小さかった。2.吸着平衡到達時間においてもイオン交換樹脂の骨格構造の影響が強く、官能基の種類の影響は小さかった。3.吸着等温線はいずれの場合もフロイントリッヒ式によくフィットした。4.競合無機イオン濃度の影響は樹脂の官能基の種類に依存していた。 以上から、少なくとも使用した初期モデル物質に関しては樹脂のイオン交換基よりも骨格構造の影響が吸着に強い影響を与えていることがわかった。競合イオンによる吸着抑制に関してのみイオン交換基の影響が強く見られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
フェノール系、3級及び4級アミンについては適当なモデル物質を見つけることができなかったため、予定していたすべての種類の物質について実験することはできなかった。しかしながら、本年度得られたデータは上述のように樹脂の構造と吸着の関係について非常に明瞭な傾向を示しており、研究初年度の目的である樹脂の絞込みを行うには十分な知見が得られている。従って、研究は概ね計画通り進捗していると評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
H29年度は研究実施計画に記載の通り、対象とする樹脂を1,2種に絞込み、多種多様なイオン性物質数十種類を用いて物質間の吸着係数の比較を行う。そして得られたデータを文献中の有機物/水分配係数、粘土鉱物/水分配係数、タンパク質/水分配係数と比較する。
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Causes of Carryover |
実験消耗品の発注が年度内に間に合わず、当初見込み額と執行額がわずかに異なることとなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当該消耗品は29年度に発注、納品されるため残った測定は今年度計画と合わせて実施する。
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Research Products
(2 results)