2016 Fiscal Year Research-status Report
人口減少は生物多様性保全の脅威か、機会か?無居住化集落から見る長期管理放棄の影響
Project/Area Number |
16K16223
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Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
深澤 圭太 国立研究開発法人国立環境研究所, 生物・生態系環境研究センター, 主任研究員 (90617101)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 景観生態学 / 土地利用履歴 / 履歴効果 / 生物多様性 |
Outline of Annual Research Achievements |
2016年度は、廃村研究家の協力者より全国の無居住化集落についての情報の提供を受け、その位置情報や離村年などの情報を整理した。そこから全国から18の調査エリア(おおよそ2万5千分の1地形図の1図幅の範囲)を選定し、そこに含まれる無居住化集落34箇所、およびそれと同程度の規模をもつ現居住集落30箇所を調査地として選定した。無居住化集落の離村後年数は、多くが20~50年の範囲であった。無居住化集落については、調査対象となる離村前に農地や宅地であった場所を明らかにするため、航空写真や旧版地形図に基づく土地被覆図の作成を行った。ほとんどの集落において、主要な土地被覆タイプは水田および畑であった。 予備調査として、福島県会津地方を対象に、無居住化集落と現居住集落の種組成の比較を行った。その結果、出現種数に有意差はなかったが、モンシロチョウやベニシジミ等の農耕地周辺に生息するチョウ類が少なく、森林性のチョウ類の出現頻度が無居住化集落でより多いという結果が得られた。 人口減少に伴う長期間の無居住化は野生生物にも正負両面の大きな影響を与えうると考えられる。その影響を明らかにすることは、将来の国土計画が生物多様性に与える影響を評価する上で重要である。今年度の実施内容により、森林、草原から市街地まで、種によってハビタットタイプが大きく異なるチョウ類全体を対象に、長期的な無居住化の影響を明らかにするための広域調査のための基盤情報が整備された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ほぼ当初実施計画通りの内容を実施することができ、調査箇所数については当初予定を上回ることができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年および30年度に生物相のセンサス調査を実施し、一部の集落については複数回の調査を実施する。データが得られた段階で離村後年数や気象条件の効果を推定するための統計モデルを構築し、それを用いた人口減少後の影響評価を行う。
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Causes of Carryover |
道路の不通により到達できない調査地点があり、調査期間が短縮したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
道路開通後に再調査のための旅費とする予定である。
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