2017 Fiscal Year Research-status Report
人口減少は生物多様性保全の脅威か、機会か?無居住化集落から見る長期管理放棄の影響
Project/Area Number |
16K16223
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Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
深澤 圭太 国立研究開発法人国立環境研究所, 生物・生態系環境研究センター, 主任研究員 (90617101)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 景観生態学 / 生物多様性 / 人口減少社会 |
Outline of Annual Research Achievements |
過年度から引き続き無居住化集落(無居住化後8-53年)および居住集落におけるチョウ類相調査を実施し、全国18地域の調査データを取りまとめた結果、52種の蝶類が出現した。種をランダム効果とした一般化線形混合モデルで種ごとの出現頻度と無居住化の有無、および無居住化後年数を説明変数として関連付け、予備解析としてモデル選択基準WBICによりどちらの指標がチョウ類の出現頻度をよく説明できるか検討した結果、出現頻度と無居住化の有無が十分に上回っていたため、それを本研究における無居住化の指標として採用した。その結果、13種において無居住化の負の効果が検出されたのに対し、正の効果を受けていた種は5種にとどまった。さらに、既存文献から出現種のハビタット特性を調べ上げ、無居住化の効果をハビタット特性から説明する階層ベイズモデルを構築した。その結果、草原性、市街地性、農地性など、開放的なハビタットを利用する種が負の効果を受けていたことが明らかとなった。一方、森林性のチョウについては正の効果を受ける傾向は確認されなかった。これらのことから、無居住化がチョウ類群集に与える影響は無居住化後速やかに現れ、その後数十年スケールでは準平衡状態にとどまると考えられた。とりわけ、無居住化は長期的な人為的な土地管理の歴史の中で維持されてきた開放地のチョウ類に対して広く負の効果をもたらすのに対し、森林性の種の多様化は限定的であった。これらの結果は、次年度の広域評価手法の開発に応用する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
野外調査によるデータ収集が順調に終了し、当初予定していたデータ解析を実施することができた。また、得られた結果は当初の予想に合致するものであり、次年度の広域評価に向けた下地を整えることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
得られた解析結果をもとに、無居住化がチョウ類の多様性に与える正負の影響を評価するための広域評価の方法を開発し、地図化を行う。
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Causes of Carryover |
契約職員を雇用してデータ整備作業を実施する予定であったが、公募の結果が不調であった。予定していた作業は課題代表者が自ら実施した。
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