2016 Fiscal Year Research-status Report
組換えBrevibacillus属細菌を用いたセルロースからの直接エタノール生産
Project/Area Number |
16K16229
|
Research Institution | Miyagi University |
Principal Investigator |
柳澤 満則 宮城大学, 食産業学部, 助教 (00647000)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | バイオエタノール / セルロース / Brevibacillus属細菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、Brevibacillus choshinensisにエタノール生産に関わる遺伝子と、セルロースを分解する酵素であるセルラーゼの遺伝子を導入し、それらの発現の有無について確認した。 まず、プラスミドベクターpHY300PLKにZymomonas mobilis由来のピルビン酸脱炭酸酵素(PDC)の遺伝子とアルコール脱水素酵素(ADH)の遺伝子を順に挿入した。その上流に、プロモーター領域を挿入することで、2つの遺伝子をオペロンとして発現させることを試みた。構築したプラスミドをBrevibacillus choshinensis NBRC15518に導入してそれらの発現を確認したところ、PDC活性は確認できたものの、ADH活性は確認できなかった。その後、ADH遺伝子上流のシャインダルガノ配列を変えたり、ADH遺伝子上流にもプロモーター領域を付加したりしたものの、ADHの発現は確認できなかった。 一方で、Saccharophagus degradans由来のセルラーゼ遺伝子の導入も試み、適した遺伝子のスクリーニングをおこなった。Cel5D、Cel5H、およびCel9Bの遺伝子をそれぞれプラスミドベクターpNCMO2に挿入し、Brevibacillus choshinensis HPD31-SP3に導入した。それぞれの遺伝子を導入した組換え菌をAZCL-HE-celluloseを含む寒天培地で培養したところ、いずれもAZCL-HE-celluloseの分解による青色色素の遊離がコロニー周辺に確認され、セルラーゼを分泌していることが確かめられた。特に、Cel5Hを導入したもので色素が遊離した領域が最も大きく、AZCL-HE-celluloseの粒子の可溶化も確認されたことから、Cel5Hの遺伝子がセルラーゼ遺伝子として適していることがわかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
エタノール生産能の付与については、研究計画において、平成28年度のうちにPDCの遺伝子とADHの遺伝子を発現させてエタノール生産能を付与する予定であった。しかしながら、Brevibacillus choshinensisにADHの遺伝子を発現させることが予想に反して困難であったことから、予定通り進めることができなかった。また、エタノール生産能のみならず乳酸脱水素酵素(LDH)の遺伝子を導入することでBrevibacillus choshinensisに乳酸生産能を付与することも別途試みたところ、LDH活性が確認できたのにも関わらず、乳酸を生産しないことが確かめられた。このことから、もしBrevibacillus choshinensisにADHの遺伝子を発現させることができたとしても、エタノールを生産しない可能性も考えられ、代謝経路などの遺伝子発現以外の部分も検討する必要があると予想された。 しかしながら、エタノール生産能の付与が予定通り進まなかったものの、平成28年度に進める計画ではなかったセルロース分解能の付与についての検討を同時に進めた。外来遺伝子の高発現と発現タンパク質の大量分泌に適したベクターと宿主の組み合わせを使用したことからセルラーゼの分泌に成功し、Brevibacillus choshinensisに適したセルラーゼの遺伝子もスクリーニングすることができた。 以上のように、研究計画通りに進めることができなかった部分があった一方で、計画に組み込まれていなかった部分を進めることができたことから、進捗状況はおおむね順調に進展していると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
まず、エタノール生産能を付与するためにADHの遺伝子をBrevibacillus属細菌に発現させる必要がある。そのために、宿主の変更、ADHの遺伝子のみの導入、Brevibacillus属細菌の代謝経路解析などを進めることを予定している。ADHの遺伝子の発現が可能となった場合には、その後、エタノールを生産するかどうかを確認する。 また、セルロース分解能の付与については、平成28年度にエンド型のセルラーゼを分泌させることに成功し、適した遺伝子をスクリーニングできたことから、エキソ型のセルラーゼやグルコシダーゼについてもその分泌や適した遺伝子のスクリーニングを試みる。その後、複数のセルラーゼの遺伝子を同一宿主に導入することにより、セルロースをグルコースに分解可能な組換えBrevibacillus属細菌を創製する。
|
Causes of Carryover |
研究計画段階では、遺伝子を増幅するPCRのためのサーマルサイクラーの購入を予定していたが、大学内の共通機器が十分に使える状況であったため平成28年度は購入の必要がなかった。 また、試薬や器具などの消耗品についても、計画段階で予定していたほど使用しなかったため、計画していた予算からの差が生じた。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
基本的には、必要となる試薬類、器具類の購入などに充当し、より効率的に研究を進められるようにする予定である。 また、研究の進捗状況から、研究計画段階では予定していなかった宿主として使用するBrevibacillus属細菌の代謝に関する解析が重要となる可能性が出てきた。これには、メタボローム解析やマイクロアレイ解析などが必要であることから、進捗状況によってはこれらの解析の外部委託に充当することも考えている。
|
Research Products
(1 results)