2016 Fiscal Year Research-status Report
複雑な流域ガバナンスへの新たなアプローチ:流域環境再生への大規模政策転換の研究
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16K16236
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
大野 智彦 金沢大学, 法学系, 准教授 (30531884)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ダム撤去 / 流域ガバナンス / 政策転換 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、持続可能な社会に向けた大規模な政策転換の事例としてダム撤去に着目し、その実現要因を政策過程論において蓄積されてきた分析フレームワークを用いて明らかにすることを目的としている。とりわけ日本国内におけるこれまでの環境政策に関する研究は政策手段に関するものが主であったが、政策過程に着目した分析によって環境政策、環境ガバナンス研究の新たな展開を開こうとするものである。 本年度は、熊本県で実施されている荒瀬ダム撤去の政策過程について新聞記事、議会などの議事録、行政資料を収集し、複雑な政策主体間の相互作用や政策理念の変化について時系列で整理することができた。荒瀬ダム撤去が最終的に決定されるに至るまでは、極めて複雑な経緯をたどっているが、その全体像はこれまで十分に明らかにされてこなかった。今年度の研究を通じてダム建設時から撤去に至る長期的な政策・社会・生態系の相互作用を把握することができた。これらの作業を通じて、政策転換のメカニズムを解明する上ではより長期的な視点から分析を進めることが有効であることが明らかとなった。この点で、今後の比較事例研究の土台を固めることができた。これらの成果は、国内外の関連する学会や研究会で報告し、『社会と倫理』における特集論文の1つとして公刊した。 また、定期的に環境政策の過程分析に関する研究会を実施し、政策過程の分析フレームワークに関する最新の研究動向に関する理解を深めることができた。これによって、本研究の分析フレームワークの改善や、分析手法の改善に役立てることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、荒瀬ダム撤去の政策過程について主要なアクターの特定、アクター間の相互作用、各アクターの政策信念の分析を行うことができた。ただし、熊本地震の影響により実施できなかった資料収集があり、次年度に実施することにする。
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Strategy for Future Research Activity |
荒瀬ダム撤去の政策過程について、政策転換のフレームワークに基づいた分析の結果を論文にまとめ、学術雑誌へ投稿する。比較対象事例として予定していたダム撤去運動がありながらダム撤去が実現しなかった事例について資料収集やインタビュー調査によってデータを収集し、予備的な分析を実施する。
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Causes of Carryover |
熊本地震の影響により、28年度前半に予定していた資料収集を実施することができなかったため、当該調査のための旅費が次年度使用額として生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
29年度に、前年度実施できなかった資料収集を実施するための旅費として、次年度使用額を活用する。
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