2016 Fiscal Year Research-status Report
音の大きさの感じ方における男女差の解明―音環境デザインの指針構築を目指して―
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16K16248
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
鶴田 真理子 宇都宮大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (80748202)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 男女差 / ラウドネス / 間隔尺度 / 比率尺度 / マグニチュード推定法 / マグニチュード産出法 |
Outline of Annual Research Achievements |
音の大きさの感じ方に男女差が生じる要因を検討するために,(1) これまでと同様に音の大きさを「大きい」「小さい」という言葉による表現を用いて評価し,その評価段階を7段階から10段階に増した実験,(2) 言葉を用いずに自由な数値を回答することで音の大きさを評価する実験を実施した。実験の結果,(1) の「大きい」「小さい」という言葉による判断では,これまでの研究結果と同様に男女差が認められ,男性の方が同じ音圧レベルの音を女性よりも「小さい」と評価していた。このことから,音の大きさの評価には評価段階に依らず男女差が認められることが明らかになった。一方で,(2) の言葉を用いずに音の大きさを評価した実験では,明確な男女差は認められなかった。 人間の感覚量は刺激強度のべき乗に比例することが分かっており,これはスティーブンスのべき法則と呼ばれている。刺激強度 (本研究の場合は音量) に対する感覚量 (被験者が自由に報告した数値) の関係に男女差がある可能性も考えられるため,スティーブンスのべき法則において刺激強度と感覚量の関係を表すべき乗の値を (2) の言葉を用いない音の大きさ評価実験の結果から求めた。その結果,べき乗の値は女性の方が大きく,音量の変化に対して女性の方が敏感に反応している傾向が見られたが,その差は統計的に有意なものではなかった。 なお,中国人を対象に (1), (2) と同様の実験を実施したところ,日本人の結果とは異なり (2) の言葉を用いない場合でも音の大きさの感じ方に男女差が見られる傾向にあった。このような文化的背景の影響については今後継続して検討する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
音の大きさの評価における男女差が評価尺度の段階数に依存しないことが明らかになった。しかし,言語を用いた音の大きさの判断における男女差が影響する可能性が示唆されたため,文化的背景の影響を考え中国人を対象とした実験を進めた。そのため,当初の実験計画より遅れを生じている。今後は文化的背景の影響も含め,計画当初予定していた実験を鋭意進めていく。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は実施が遅れている実験を進める。さらに,昨年度の実験結果から明らかになった文化的背景の影響についても合わせて検討を進める。
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Causes of Carryover |
計画にはなかった文化的背景の影響を調査する実験を行ったため,実施予定であった実験や論文投稿が遅れており,計上していた学会参加費や論文投稿費の使用がなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
予定期間中に実施できなかった実験を行う。これに関わり,実験用機材の購入,被験者への謝金,論文の再投稿を含めた研究成果発表のために費用を使用する。
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Research Products
(1 results)