2016 Fiscal Year Research-status Report
眼球内散乱特性による見え易さ予測のための分光分布を考慮した眼球内散乱光量の定量化
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16K16257
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
池上 陽子 奈良女子大学, 生活環境学部, 特任助教 (20713928)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 順応輝度 / 視認性 / 分光特性 |
Outline of Annual Research Achievements |
超高齢社会や生活者の高い安全性への要求といった点から事故が起きない安全な空間計画のために、多くの場面でものの見易さ予測が利用されるに違いない。波長特性が眼球内散乱光に影響を与えることから、当該年度では、光源に昼白色蛍光ランプとモニターを用いた場合の検討において、中心窩へ重畳する眼球内散乱光量を算出する。既往研究との比較を考え、高視力若齢者を対象として被験者実験を実施している。 実験は輝度差弁別閾の測定である。実験方法は、暗室内に27.0 型液晶モニターに呈示する円形視標と半径5.1°の近接背景、5400cd/m2 とした高輝度光源(昼白色ツイン蛍光ランプ)を設置する。高輝度光源の立体角0.0015sr であり、カラーフィルターで光色を変える。視標と近接背景は高輝度光源のいずれの光色条件においても白色である。近接背景輝度は0.2~300cd/m2 の9 条件、視標半径は4~128'の6 条件、高輝度面光色は青, 緑, 黄, 赤, 白の5 条件である。被験者は両眼視力1.2~1.5の若齢者5名である。 中心窩への眼球内の散乱光量は、高輝度光源を提示する場合と呈示しない場合と輝度差弁別閾値から算出する。今回の検討と、同じ装置で実施している両眼視力約0.8以下の若齢者および高齢者に対する既往研究から眼球内散乱特性において光色間に有意な差がみられない。この傾向は両眼視力や年齢による違いはみられない。また、高輝度光源の最大出力波長もしくは放射輝度、三刺激値XYZ、表色値u'v'と眼球内散乱光量との関係においても明確な関係性が表れない。視標や近接背景を白色蛍光ランプによる透過光で実施した既往研究では最大出力波長順となり、傾向が異なることが示される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
眼球内散乱光量の光色の影響が、既往研究の傾向で得られた光源の最大出力波長順と一致しなかった。眼球内散乱光量に分光分布が影響する要因として、可視光の波長による屈折率の違いや色収差が考えられる。また、視野内の光源の位置によって中心窩への刺激が変化することから、単純に光源が有する波長特性だけでは説明が困難なことも予想される。 考えられる幾つかの物理量を測定し、眼球内散乱特性との関係性を検討したものの関係が示されなかった。以上のことから、今後は光源の特性だけでなく、視野中心に呈示される視標やその背景の分光分布の影響と、視野周辺にある高輝度光源の影響との両者の影響を明らかにできるような検討が必要であることが示される。
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Strategy for Future Research Activity |
今回の検討から予測される視野内の呈示場所による中心窩への散乱特性の影響を明らかにすることを考える。視野周辺に呈示される高輝度面の光源の影響を分離して考察ができるような実験条件になるように見なおす。中心窩付近に視標とその近接背景のみを呈示でき、光色を変化できる装置、もしくは視対象と高輝度面の光源特性を一致する装置を準備し、視野中心部分のみに視標と近接背景を呈示させることで、視野中心付近における中心窩への散乱特性を把握する輝度差弁別閾値を測定する実験を行うことを考えている。加えて、周辺に高輝度面も呈示させ、視野周辺における影響の検討も行っていきたい。被験者は幅広い視力層の若齢者で実施する。今までの既往研究も踏まえて、少しでも光色の影響を明らかにし、最終的には光色の関係性を組み込み、眼球内散乱光量を定量化できるように進めていく。
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