2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K16258
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
安川 涼子 奈良女子大学, 生活環境学部, 特任助教 (30646633)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 再生繊維 / 機能性色素 / 羊毛 / 電界紡糸 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、タンパク質系の動植物系再生繊維を中心に用いて、機能性色素のプルシアンブルー顔料を高濃度で安定的に固定化させることを目的としている。再生繊維化のための繊維材料加工、繊維素材の表面改質処理、プリントや染色技術を用いた繊維着色加工を組み合わせ、機能性色素の固定化を構築するための基本的情報を得る。具体的な方法として3つの課題から検討する。(1)タンパク質系再生繊維の作製(2)再生繊維および合成繊維への機能性色素の固定化(3)着色繊維の評価および分析である。 セルロース系再生繊維はレーヨンなどの既存のものが存在することから、羊毛からタンパク質系の再生繊維の作製を検討した。本年度は企業から供与の羊毛トップを生化学分野で一般的に用いられているタンパク質変性剤と還元剤を用いて、還元型ケラチンの抽出を行った。抽出したケラチンは透析、凍結乾燥を行い、粉砕して粉末状のケラチンを得た。ケラチン粉末は酸性溶媒に溶解し、キャストフィルムの作製を行った。また、ケラチンの再生繊維化については電界紡糸法(エレクトロスピニング法)を用いて行い、不織布を作製した。不織布はFE-SEMによる観察を行い、極細繊維が確認できた。 一方、浸染による顔料着色の条件のpH調整や助剤の添加による検討を市販の羊毛布帛を用いて行った。助剤は顔料の着色にさほど変化が見られなかったが、pH条件により羊毛布の着色濃度の変化が認められた。羊毛布帛と同様の条件で不織布の浸漬による顔料着色を試みたところ、極細繊維間での癒着が認められた。 次年度は、電界紡糸法の調整ならびに紡糸条件の確立を行う。不織布の浸漬時の繊維間の癒着を防ぐため、極細繊維からの不純物の除去や顔料を添加した状態での電界紡糸を検討する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は課題1を中心に検討した。羊毛からのケラチン抽出にあたり、種々の溶媒を検討したが、生化学分野で一般的に用いられているグアニジン塩酸塩とTHPP(トリスヒドロキシプロピルホスフィン)が最も安定的にケラチンの抽出を行うことができた。抽出したケラチンは電界紡糸法により繊維化できることがわかった。顔料着色の溶液条件の検討についても行うことができ、おおむね課題1はクリアできたと考えられることから、おおむね順調であると自己評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目は、初年度に引き続いてケラチンの抽出を行って電界紡糸法による繊維化を行いつつ、更に安定的に紡糸できるよう、紡糸条件を確立させる。並行して課題2の色素の固定化にむけて、色素添加時での電界紡糸やケラチン以外の繊維でも電界紡糸の検討を行い、実用面を見据えて分析および評価を行っていきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
次年度への繰越し額については、科研費申請時からの備品装置変更、消耗品の割引や価格変動、海外や国内出張旅費の精算等から発生した。これは次年度の実験に関する消耗品の購入や旅費に使用する予定である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の研究費は、FE-SEMの測定実験や研究打合わせのための旅費、パソコン、解析ソフトやデータ保存のメディア、外部試験の依頼費、実験器具や薬品等に使用する。また、情報収集や成果発表のための学会参加の費用、論文投稿のための校閲にも用いる予定である。
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Research Products
(2 results)