2016 Fiscal Year Research-status Report
大麦と米の混炊飯および大麦粉添加パンの老化特性解析
Project/Area Number |
16K16261
|
Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
露久保 美夏 東洋大学, 食環境科学部, 助教 (50646924)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 大麦 / 米 / 老化 |
Outline of Annual Research Achievements |
大麦は米と混炊して麦飯として食されることが多く,近年健康志向の高まりによって一般消費者においても高い関心が寄せられているが,麦飯の嗜好性や調理学的特徴などについての知見は多くはない。本研究では大麦の調理性に注目し,特に大麦が米と比較して顕著なデンプンの老化抑制効果を有していること,このことが,時間の経過した麦飯の食味に多大な良い影響を与えうるであろうとの推察のもと,米と大麦を混炊した麦飯の老化のメカニズムを明らかにする研究を行っている。 試料に用いる大麦は,近年嗜好性の高さが注目され市販品として店頭に並ぶことも多くなってきた糯種大麦の皮部を除いた胚乳のみの60%搗精丸麦(第3搗精終了品)を選定した。試料米には90%搗精米を使用した。先行研究において,飯の老化に関する報告はなされているが,大麦の老化に関する知見は蓄積されておらず,また老化の測定方法に関しては種々の手法が用いられる。本研究においては,既存の老化測定方法の他に新たな測定方法により米と大麦の双方に有用でありながら簡便な老化の指標となる手法を用いた老化測定方法の可能性も検討した。炊飯後の米および麦粒を一定時間放置した後圧縮し,蛍光顕微鏡を用いた観察によって圧延された粒の面積や透過の程度を求め,炊飯直後から経時的な変化を捉えることで老化の指標となり得るかどうか検討している。また,走査型電子顕微鏡よる生米および炊飯直後から放置した後の米粒,麦粒についての経時的な画像を取得し,老化の程度に寄与する知見が得られる可能性を検討している。このことについては炊飯後の飯粒や麦粒を測定するための前処理において種々の検討を必要としており,測定のための条件設定に時間を要するところとしている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
麦飯の老化測定において,新たな老化の指標となる有用な方法を検討していることにより,それらの条件設定に費やす時間を要しているため。当初予定していた機器測定などに加えて,新たな機器を用いることによって老化の程度を明らかにする手法を構築する可能性を見出したため,本研究の遂行にあたり新たに検討すべき事項として多少の計画変更を行い,有用なデータを得るために時間を費やして種々の実験を実施することを検討しているため。
|
Strategy for Future Research Activity |
麦飯の老化測定に関して,画像解析,物理化学的測定など種々の方法を用いて混炊後の飯粒,麦粒のそれぞれについて炊飯後に放置した場合の経時的な老化の程度を明らかにし,米単独で炊飯した場合と比較検討を行う。大麦が老化の抑制に寄与することの要因として大麦内在性酵素が炊飯中に活性することで生成された糖による影響が想定されるため,老化の進行と酵素の働きや糖生成との相関について明らかにし,さらに炊飯条件によって老化進行の程度に差異が生じるかどうか,制御が可能となるかどうかについて検討する。合わせて官能評価によって嗜好性を把握し,老化抑制効果を活用しながらもより嗜好性の高い麦飯の調理についての知見を得る。これにより,家庭や加工食品,大量調理などにおける大麦利用の可能性について有用な知見を蓄積することを計画している。 その後,炊飯後に冷凍・解凍した白飯および麦飯の特性について,経時的な老化の程度を測定し,冷凍・解凍処理が麦飯に及ぼす影響と白飯との際について明らかにする。これらにより,炊飯後および冷凍・解凍処理を行った麦飯のそれぞれについて老化のメカニズムを明らかにする。
|
Causes of Carryover |
研究を遂行するにあたり,既存の機器および器具類が使用可能であったことに加え,それらについて消耗品の発生が予定していたより少なかったため。また,多少の計画変更により購入を必要とする機器類の使用時期が後方に移行したことに伴い,購入を先延ばしにしたことが理由として挙げられる。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
複数回の実験試行により発生する試薬等の消耗品および機器の保守に伴う消耗品の購入,使用時期を変更した機器類の購入を行う。その他,研究成果の学術誌掲載,学会発表等の費用として使用する。
|