2016 Fiscal Year Research-status Report
摂食過程における食塊の性状変化と主観的特性の関連性
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16K16267
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Research Institution | Nihon University Junior College |
Principal Investigator |
岩崎 裕子 日本大学短期大学部, その他部局等, 助教 (60511194)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | トロミ調整食品 / 食塊 / 唾液 / 粘度 / テクスチャー特性 / 官能評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、主成分の異なるトロミ調整食品3種(デンプン、グアーガム、キサンタンガム)を添加し粘度を付与したゾル試料について、口腔内における性状の変化を検討した。 食塊の採取に当たり、被験者は試料(一口量15ml)を口に含み、1回/秒で、1、5、10、15回と指定回数咀嚼し、吐き出した食塊を試料とした。唾液の影響により性状が変化するため、採取直後のものを測定用試料とした。 食塊の粘度および硬さを測定した結果、トロミ調整食品の種類により程度は異なるが、口に含む前の基準試料と比較し、1回後、更に15回後は低下した。特にデンプンが主成分のトロミ調整食品添加試料は、粘度および硬さの低下が顕著であった。官能評価では、1回後食塊、5回後食塊、10回後食塊の3試料について比較した。飲み込みやすさについては、デンプンおよびキサンタンガム試料は、1回後食塊と比較し10回後食塊が飲み込みやすいと評価された。食塊の粘度および硬さが低下したことが、主観的評価である飲み込みやすさに影響したことが示された。 写真による食塊の性状変化を観察した結果、白濁していたデンプン試料は、唾液の影響により透明となる様子が観察された。試料の広がり距離について、デンプン試料は摂食時間に伴い大きくなったが、キサンタンガムおよびグアーガム試料は広がり距離に変化が見受けられなかった。 口腔内に取り込まれてから摂食運動に伴う、力学的特性および主観的特性の変化を確認した。主成分によって変化の程度は異なるが、誤嚥を防ぐために粘度を付与する際は、状態が口中で変化することを考慮することが重要であろう。さらに本実験程度の粘度では、摂食時間が長いほど飲み込みやすくなると評価されたことから、飲み込む時の粘度としてはより低いほうが飲み込みやすいと評価されることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、ゾル試料についての食塊の摂食過程における変化を力学的特性および主観的特性である官能評価で解明した。嚥下時の筋活動測定も行ったが、嚥下筋活動量は個人によるばらつきが大きく、試料間の有意差はみられなかった。 また、食塊の唾液と食品の混ざり具合を明確にしたいと考え新規に顕微鏡を購入したが、撮影方法および染色方法について現段階で的確な方法を見いだせていない。唾液と食品との混合状態を画像としてとらえるため、画像撮影については今後も検討していく。
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Strategy for Future Research Activity |
28年度の実験方法および結果を加味しながら、今年度は、固形食品について、同様の実験手法を使い研究を進行していく。 試料は主食となる米を用い、やわらかめのご飯、ゲル化材を添加して調製したお粥ゼリー等、形態を変化させて比較する。 さらに、一般的に飲み込みにくいと言われている食品であるさつまいもは、調理法により食べやすさが変化することが経験的に知られている。調理法によりどのように異なるか、摂食過程の食塊からその原因を検討し、食べやすくするための改善点を考えていく。
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Causes of Carryover |
予算時には購入予定であった舌圧測定機器であるが、実験を進めていく中で舌圧を測定する必要はないと判断し、購入をしなかった。 成果報告を予定していた学会へ参加ができなかったため、旅費が繰り越される。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
29年度は、実験の対象試料として固形物を扱う。研究の軸となるテクスチャー測定を行うための機器は、測定可能な上限が設けられている。より硬い試料を測定するためには、測定機器の一部を適したものへ取り換える必要があるため、測定機器の一部(ロードセル)を購入する。また、28年度よりも材料費や消耗品が上がることが予測せされるため物品費として使用することを考えている。 設備備品費…レオナ―ロードセル(20N)\200,000、TPU\450,000、物品費…器具\50,000、材料費\50,000旅費…学会発表のための出張\50,000謝礼…\50,000、印刷費\50,000
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