2016 Fiscal Year Research-status Report
食品機能性色素成分の調理加工による構造・機能性変化に関する基礎的知見の確立
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16K16268
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Research Institution | Kanagawa Institute of Technology |
Principal Investigator |
大澤 絢子 神奈川工科大学, 応用バイオ科学部, 准教授 (00550287)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 機能性成分 / カロテノイド / 抗酸化活性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、「食品に含有される微量カロテノイドの網羅的分析研究(研究Ⅰ)」と、「調理加工が食品に含有されるカロテノイドに与える影響について解明する研究(研究Ⅱ)」の2点を主題とし、食品に含まれるカロテノイドに関する基礎的知見を確立することを目指している。食品に含有されるカロテノイドについては、既に多くの基礎的知見が存在するが、過去に含有カロテノイドが報告されている食品材料についても分析機器性能や構造解析技術が進歩した現在に再分析を行うことにより、従来は未同定とされてきた化合物が新たな構造を有するカロテノイドとして見出される可能性がある。また、カロテノイドが有する機能性が次々と明らかとなり、品種改良等により従来型とは成分組成が異なる農作物が市場に広く出回るようになった現在、本研究は大変意義深いと考える。 本年度の研究では、まず、サツマイモに含有されるカロテノイドに関する研究に着手した。サツマイモに含まれるカロテノイドを抽出し、詳細分析するための手法を検討・確立した後、6種のサツマイモ(紅マサリ、紅アズマ、アイコマチ、ホシノコガネ、ヒメアヤカ、ホワイトスター)について、生のままカロテノイドを抽出し、詳細に分析した。その結果、β-caroteneやLutein等、植物性食品に多く含まれるカロテノイドの他に、多種多様なEpoxide体が存在することを確認することができた。さらに上記6種については、順次、調理加工による含有カロテノイドの変化に関する研究も着手している。例えば、紅マサリに含有されるカロテノイドについては、調理方法により減少量が異なること、カロテノイドの構造により減少量が異なること、2種のepoxide体については調理加工により消失(または検出限界まで減少)すること、が本研究により明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の予定では、本年度中に10種のサツマイモに含有されるカロテノイドの詳細分析と、それらが調理加工により受ける影響に関する研究の大部分を終える予定であった。しかし、サツマイモに含有されるカロテノイドは、極性が非常に低いこと、多種類かつ類似構造が多く、分析系によっては高速液体クロマトグラフィー分析において保持時間が非常に近接することから、適切な分析系を構築するのに時間を要したため、当初の予定よりも研究の進捗状況が遅くなっている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度以降は、まず、平成28年度から着手している「様々なサツマイモに含有されるカロテノイドの網羅的分析研究」「サツマイモに含有されるカロテノイドの調理加工による変化の詳細検討」の研究を継続して行い、完了することを目指す。 さらに、各調理を施したサツマイモから有機溶媒で色素を抽出し、溶媒分配により粗精製した後、これを用いて各種抗酸化活性評価を実施する。カロテノイドの異性化体については、All-trans体と活性強度や生体への吸収率が異なるという研究結果(非公式)もあることから、まずin vitro試験を用いて活性評価を行い、未加工のサツマイモから得たカロテノイドエキスの活性強度と比較検討を行う。また、サツマイモに含有されるカロテノイドの抗酸化活性強度に調理前後で変化が生じた場合には、調理加工した試料を大量調整して含有されるカロテノイドを網羅的に単離し、上記各種抗酸化活性評価を実施して活性が変化した要因を明らかにすることを目指す。
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Causes of Carryover |
サツマイモに含有されるカロテノイドの抽出・分析手法の検討に時間がかかってしまったため当初の予定通り研究を進めることができず、研究用試薬の購入量が当初より減少した。また、本年度は学会発表可能な研究成果を得るに至らず、発表用経費を使用しなかったため、次年度使用額が生じてしまった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度の研究で予定していたものの着手できなかった研究(抗酸化活性試験等)の試薬を研究の進捗に合わせて購入すると共に、研究用サンプルをより適切な環境で保存するための低温フリーザーを購入したいと考えている。
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